2013 Fiscal Year Annual Research Report
光合成による細胞膜プロトンポンプ活性制御のシグナル伝達と生理的役割の解明
Project/Area Number |
13J03307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 将樹 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞膜タンパク質 / 光合成 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
(1)ドットプロット法によるH^+-ATPaseのリン酸化シグナル伝達の突然変異株のスクリーニング シロイヌナズナのロゼット葉のH^+-ATPaseのリン酸化レベルは暗所で低く、光照射下で光合成に依存して顕著に上昇することが明らかになっている。しかし、光合成が行われる葉緑体からH^+-ATPaseが局在している細胞膜へのシグナル伝達機構は全く不明である。そこで、H^+-ATPaseリン酸化のシグナル伝達因子を探索するため、リン酸化レベルを直接の指標としたスクリーニングを行った。一次スクリーニングでは、EMS処理したシロイヌナズナのM2世代のロゼット葉を用いてドットプロットを行い、暗所でリン酸化レベルが高い変異株、または光を照射してもリン酸化レベルが上昇しない変異株を単離した。得られた候補株について、H^+-ATPaseのリン酸化レベルをウエスタンブロッティングによって定量的に検出する二次スクリーニングを行った。現在までにそれぞれ約5000株ずつスクリーニングを行い、リン酸化レベルが暗所で高い株が8株、光照射下で低い株が12株得られた。現在、リン酸化レベルが高い株と低い株から1株ずつマッピングを行っており、それぞれの原因遺伝子の座乗染色体を明らかにしている。 (2)細胞膜H^+-ATPaseが光合成によって制御される生理的な役割の解析 シロイヌナズナの葉において、光合成に依存してH^+-ATPaseがリン酸化されることが明らかになったが、その生理学的役割は不明である。そこでまず、葉のどの組織・細胞のH^+-ATPaseが光合成に依存してリン酸化されているのかを明らかにするため、葉の横断切片を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、葉肉細胞の細胞膜で光に応答したH^+-ATPaseのリン酸化が検出された。さらに、葉肉細胞プロトプラストにおいても光合成に依存したH^+-ATPaseのリン酸化が確認され、この応答が葉肉細胞において細胞自律的に起こっていることを明らかにした。そこで、恒常的にH^+-ATPaseを活性化させるアミノ酸置換を導入したH^+-ATPaseを葉肉細胞で特異的に発現するプロモーター制御下で発現させる形質転換植物を作出した。現在、得られた形質転換植物の選抜を行い、ホモ化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
突然変異体のスクリーニングよって、H^+-ATPaseのリン酸化レベルが暗所で高い株や、光照射下で低い株がともに単離できており、その原因遺伝子を同定することで光合成によるH^+-ATPaseリン酸化のシグナル伝達の理解が進むと考えられる。また、光合成によるリン酸化がおこる葉肉細胞において恒常活性型H^+-ATPaseを発現させることで、その生理学的意義に迫れると考えられることから、研究目的はおおむね順調に進展していると考える
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングでは、これまでに単離された候補株についてマッピングを行い原因遺伝子の同定を進める。その後、同定した遺伝子のコードするタンパク質の性質に基づいた生化学実験を行う予定である。また、葉肉細胞において恒常活性型H^+-ATPaseを発現させた形質転換株について、光合成活性や光合成に依存した葉の細胞伸長、物質輸送など光合成に関連した表現型に注目して解析を行う。
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