2014 Fiscal Year Annual Research Report
光合成による細胞膜プロトンポンプ活性制御のシグナル伝達と生理的役割の解明
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13J03307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 将樹 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞膜タンパク質 / 光合成 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜プロトンポンプ(H+-ATPase)は細胞外へプロトンを能動輸送する一次輸送体であり、植物に必須の酵素である。以前の研究から、H+-ATPaseの活性化には自身のC末端から2番目のスレオニン残基のリン酸化が重要であることが明らかになっている。これまでに、シロイヌナズナのロゼット葉のH+-ATPaseは光合成に依存してリン酸化されることを明らかにしたが、光合成からH+-ATPaseのリン酸化までのシグナル伝達は明らかでない。そこで、このシグナル伝達因子を解明するため、暗所においてすでにH+-ATPaseのリン酸化レベルが高い株や、光によるH+-ATPaseのリン酸化レベルの上昇が見られない株をドットブロットを用いてスクリーニングした。これまでに約5,000株のスクリーニングが終了しており、暗所でリン酸化レベルが高い株が8株、光照射下でリン酸化レベルが低い株が12株得られた。これらの変異株において顕著な表現型を示す株についてマッピングを行い原因遺伝子の探索を行ったところ、暗所でリン酸化レベルが高いD4-9変異株にアミノ酸置換を伴う一塩基置換が存在する遺伝子Xを見出した。遺伝子Xを含むゲノム断片をD4-9変異株に導入したところ、暗所でのH+-ATPaseのリン酸化レベルは野生株と同等のレベルまで低下していた。さらに、遺伝子XにT-DNAが挿入されたノックアウトラインを解析したところ、D4-9変異株と同様に暗所で高いリン酸化レベルを示した。これらの結果から、遺伝子XがD4-9変異株の原因遺伝子であることが示された。遺伝子Xがコードするタンパク質の機能から、光合成に依存したH+-ATPaseのリン酸化は光合成で生産される糖が仲介している可能性が示唆された。光合成に依存したH+-ATPaseのリン酸化は比較的早い反応で、光照射開始後15分ですでにリン酸化が起こっている。そこで、光照射後の糖蓄積のタイムコースを調べたところ、H+-ATPaseのリン酸化と一致する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
突然変異株のスクリーニングから、暗所においてH+-ATPaseのリン酸化レベルが高い変異株が単離され、その原因遺伝子の特定が完了した。この遺伝子がコードするタンパク質の性質から、光合成に依存したH+-ATPaseのリン酸化に糖が仲介している可能性が示唆されており、光合成によるH+-ATPaseリン酸化のシグナル伝達が解明されつつあることから、研究目的はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングで得られた結果から、光合成に依存したH+-ATPaseのリン酸化に糖が仲介している可能性が示唆された。そこでさらに、この可能性を検証するため光合成による糖の合成が抑えられた変異株の作製を進めている。この変異株を解析することによって、光合成によるH+-ATPaseのリン酸化と糖の関係性が明確になることが期待される。
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