2014 Fiscal Year Annual Research Report
形と動きの普遍性 - 一つの液滴から細胞集団まで -
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13J03349
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
江端 宏之 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクティブマター / パターン形成 / 非線形・非平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
私はこれまでの研究で垂直加振下のポテトスターチ懸濁液の界面において安定な穴から分裂する穴への分岐現象を発見した。このような穴の形状の分岐現象を説明するために、我々は自発運動する柔らかい粒子の変形と運動のモデル方程式を使った。その結果、間欠的な大きな変形や分裂が起こる時間間隔などの基本的なダイナミクスを説明できることを示した。さらに、私は比較のため、ノイズ入りの化学反応系(グレイスコットモデル)の分裂するパターンが持つ性質を調べた。グレイスコットモデルの分裂するパターンもノイズにより分裂が促進されること、分裂が起こる時間間隔の分布などの性質が分裂する穴の持つ性質に良く似ていることを示した。このことは、化学反応系と加振された懸濁液界面という全く異なる二つの系で、分裂するパターンが同じ枠組みで理解できる可能性を示唆している。 また、自発運動する粒子の形状の自発的対称性の破れと運動の間にある関係を明らかにするための実験を行った。私は水よりも重く粘性の高いシリコンオイル上に水滴を乗せ垂直加振することで、液滴が変形をしながら運動することを発見した。これは加振により水滴と空気の気液界面のみ共振を起こし、水滴上に局在したファラデー波が起こる事で駆動されることが分かった。液滴は加振周波数を低くするに従い、自転運動から公転運動、直線運動、ジグザグ運動へと順々に運動モードが分岐していく様子が確認された。また、私は変形しながら自発運動する粒子に対して提案されている、変形と運動のモデル方程式を応用することで実験において観測されたすべての運動を再現できることを示した。実験ではファラデー波の対称性の破れにより運動モードの分岐が起こることが分かってきており、液滴の形状の対称性と運動モードの関係が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加振された濃厚懸濁液界面の分裂する穴と化学反応系のグレイスコットモデルにおける分裂するスポットの統計的性質を比較することで、全く異なる二つの系が非常に似た性質を持つことを示した。これにより、分裂するパターンに普遍的な性質がある可能性を示すことが出来た。 水面上を自発運動するアルコール液滴などの既存の系では重心運動することにより液滴の変形が誘起されている。一方、泳ぐ液滴では実験とモデルの数値計算により、楕円変形が大きくなることで並進運動などの運動の分岐が起こっていることが分かった。これは泳ぐ液滴では液滴表面の変形により重心運動が駆動されていることを示している。このように変形の大きさと重心運動の速度の関係から、変形駆動の重心運動を直接的に示したのは初めての報告である。
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Strategy for Future Research Activity |
液滴の実験において、運動の分岐を詳細に調べているのは静止から並進運動への分岐(ドリフト不安定性)のみなので、静止から自転、並進運動からジグザグ運動など、さまざまな運動の分岐について測定を行いモデルとの比較を行う。また、液滴の運動の分岐の際には必ず液滴上のファラデー波の対称性が破れていることが分かってきた。このことから、運動の分岐のメカニズムを明らかにするにはファラデー波の対称性が破れを詳しく調べる必要がある。 濃厚懸濁液の分裂する穴については、化学反応系のグレイスコットモデル以外の分裂するパターンの統計的性質を調べ、分裂するパターンに普遍的な性質があるかをより詳しく調べる。
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Research Products
(5 results)