2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03373
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
安室 春彦 琉球大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 環境エンリッチメント / 頭足類 / トラフコウイカ / 発達 / 行動 |
Research Abstract |
本研究は、沖縄県沿岸に生息するトラフコウイカ(以下、コウイカ)を対象に、環境エンリッチメントの知育効果を解明し、これに基づき照明デザインを取り入れた新しい飼育環境を創出することを目的とする。この目的達成のために、平成25年度は研究項目「(1)知性構築に及ぼす環境エンリッチメント効果」を次のように実施した。すなわち、コウイカを7日齢より単独状態で隔離環境、貧環境、標準環境、エンリッチ環境の4環境で育成し、知性の発達過程を調べ、以下のような知見を得た。 空間把握能 : 2ヶ月齢より、エンリッチ環境で育成したコウイカは、他の3環境で育成したコウイカと比較して、標的を素早く、正確に、より遠い距離から捉えるようになった。一方、隔離環境群と貧環境群のコウイカでは捕食成功率が著しく低下し、正確に空間を把握する能力を形成できていなかった。 種内コミュニケーション能 : 3ヶ月齢より、何れの環境で育成したコウイカも同種他個体に対して急速に接近する様子が観察されたが、接近する際、集団状態で育成したコウイカと隔離環境で育成したコウイカでは、コミュニケーション能に関わると思われる表出体色パターンに相違が見られた。 学習・記憶能 : 2ヶ月齢より、育成環境に関わらず、コウイカで学習が成立する様子が確認された。一方、エンリッチ環境で育成したコウイカは、記憶能を艀化後のより早い段階獲得している様子が窺われた。しかし、他の3つの環境で育成したコウイカではこのようなことは観察されず、長期間にわたる記憶保持の能力の形成も認められなかった。 脳内神経ネットワーク : 何れの環境で育成したコウイカも、体サイズの成長に伴い脳重量が経時的に増加し、その増加傾向は育成環境間で類似した。 以上のように、コウイカの知覚や社会性に関わる能力の発達には、育成環境のもつ複雑さや豊かさが強く影響することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究を達成させることができ、予想通りの結果を得ることができたため。また、当初の計画よりも長期間の飼育に成功し、トラフコウイカにおける環境エンリッチメントの長期的な効果を検証することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
知育発達に関わる脳内の領域を解剖学的に観察するなど、より詳細な検証を行う。また、当初の計画通り、研究項目「(2)照明デザインによる最適飼育条件の創出」を行う。
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Research Products
(2 results)