2013 Fiscal Year Annual Research Report
資本主義の多様性アプローチを用いた制度変化分析 -ドイツの漸進的な変容を中心に-
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13J03386
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 亘太 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 労使協約 / 派遣労働 / 最低賃金 / 制度変化 |
Research Abstract |
ドイツの労働協約システムの再編過程を、①協約自治に対する政治的支援(干渉)の度合をめぐる対立②将来の分配と交渉力を左右しうる手続をめぐる対立 に注目ながら調査し、研究発表を行った。本研究の意義は、①様々な利害集団の交渉力の公平性を確保するうえで適正な交渉枠組み及び政治的支援の在り方とは何かについて、ドイツにおける社会的回答を明らかにする点 ②国家を含めた諸集団の認識が科学的調査と討議を通じて徐々に擦り合わされ政治的決定に至る過程を概観することによって、社会的な合意と正当性を引き出すこの科学的調査と討議の重要性を事例に即して確認する点である。 具体的な調査項目と成果は以下の2点である。 (1) 労働協約システムのアウトサイダーである派遣労働者の増加に対処する金属産業労組 金属産業労組による、派遣労働者の待遇改善の取組みに焦点を当てながら、伝統的に正規労働者志向の戦略を採用してきた当該組合が2000年代規制緩和後の労働環境に見合うアイデンティティーを再構築しようと試みてきたことを明らかにした。くわえて、当該組合が、企業が派遣労働を活用するというこの労働環境を所与としたうえで、雇用形態が多様化する中で求心力を高めようと試み、一定の成果を挙げたことを明らかにした。 (2) 一般法定最低賃金導入までの論争 2013年連立協定において導入が決定した一般法定最低賃金をめぐる、過去20年間の社会運動と政策論争を概観した。論争での焦点は、①協約自治に対する政治的介入の度合 ②最低賃金の導入が雇用に与える影響 であった。本研究は、①について、政治的妥協の結果、代表的な2つの案の中間に帰結したこと、②について、経済研究機関の研究蓄積の結果、諸々の利害集団の見解が、雇用に対する大きな悪影響は考えにくいという認識に収敏したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査した項目2つを、それぞれ査読誌に投稿しているため。ただし、研究計画では、経済的行為者が「既存の」制度を革新的に利用することがドイツ労使交渉制度の変容に影響を与えたという仮説を有していたものの、直近の変化では①経済的行為者が労使交渉制度の「再構成」を、社会運動を介して政治に要求した点、②世論圧力から、それが政治的決定に到達した点、が確認された。そこで、研究代表者は、これら2点を、ドイツの現状により合致した研究課題として重点的に調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、労使交渉制度の再構成を図る政治的決定がなされた2013年連立協定(CDU/CSU・SPD)に至る歴史的経緯を調査したい。残された論点は、「協約単一原則」である。
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Research Products
(6 results)