2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 由理花 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 政治史 / 政党政治 / 近代史 / 日本史 / 政友会 / 自由党 / 選挙 |
Research Abstract |
i)近代日本の政党政治の発展過程で長く政党の中心にあった松田正久の選挙区佐賀県の地方地盤と、ii)自由党最高幹部の-角を占めた後、初の政党内閣である第一次大隈内閣で蔵相を務めるまでの松田の動向と政治構想の二点を中心に研究を行った。九州歴史資料館・佐賀県立図書館・小城市立歴史資料館および国立国会図書館での史料調査・収集から得た松田の政策構想・選挙区の動向と、原の政治構想・選挙区との関わり方を比較して、原敬関係の未公開の膨大な史料を整理・収集する平成23~25年度科学研究費補助金(基盤研究〔B〕課題番号23320135「第一次世界大戦後の世界秩序の変容と日本―新出「原敬関係文書」に基づく検討―」〔代表、伊藤之雄〕)の研究報告である伊藤之雄編著『原敬と政党政治の確立』出版準備研究会で報告した。「原敬内閣総理大臣就任95周年記念シンポジウム」(10月6日於盛岡市)にも参加し、松田・原の選挙区を比較するための貴重な知見を得た。 これらをふまえ、前掲『原敬と政党政治の確立』(干倉書房、2014年7月刊行予定)の第7章にあたる「政友会領袖松田正久と選挙区佐賀県―原敬との比較の視点から―」と題する論文(71頁)をまとめた。ここで、①松田は選挙区に対して産業振興の必要と実業教育の重要性を訴えた、②松田は党中央での基盤の確立によって、選挙区・九州出身代議士の中での基盤を固めていった、③国際的な枠組みで外交を考え、対外強硬論を抑えた、④大隈重信を背景とする武富時敏勢力の為に選挙基盤をなかなか築けなかった、ことを明らかにした。これは、原の選挙地盤を分析した第6章の伊藤之雄論文と、政友会の最高幹部が地方利益誘導に走っていない点で類似しており、政党政治の発展が、従来主張されていたように地方利益誘導の上に成り立ってはいなかったこと、有力政治家が国際協調の枠組みの中で行動していたこと等を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
修士論文の中央政治部分の前半部にあたる、松田が自由党最高幹部となり大隈内閣の蔵相を辞任するまでを『法学論叢』(約6万字、3回連載)にまとめる予定であったが、伊藤之雄編著『原敬と政党政治の確立』の出版が具体化したので、その掲載論文として、松田と選挙区との関係「政友会領袖松田正久と選挙区佐賀県―原敬との比較の視点から―」(約61000字)を先にまとめた。ここで、松田と選挙地盤との関係を初めて実証し、松田が地方利益誘導で基盤を形成したのでなく、実業推進や行政・財政整理等の総合的政策体系を訴えることで形成したこと等を明らかにした。松田の成長と中央政治との関わりの前半部分の論文も投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
松田が自由党最高幹部となり大隈内閣の蔵相を辞任するまでの松田の成長と中央政治との関わりを、選挙地盤研究から得た知見も含めて論文にまとめ、『法学論叢』への投稿準備を進めている(約6万字)。本論文では、①松田が急進的な自由民権運動とは距離を置いた、②九州派を抑えつつ、星亨と連携して自由党を近代的な政党へと改革した、③蔵相を務めた第一次大隈内閣総辞職後、地租増徴の受け入れに呼応したこと、を考察している。さらに、国立国会図書館等での追加調査をふまえて松田が政友会の一体性を維持して政権を担当可能な大政党へと導くまでを論文として完成させて『法学論叢』に投稿する(約6万字で3回連載の予定)。以上の成果を纏めて博士論文を執筆することで、党人派・九州派の領袖である松田正久を議会・政党政治の発展過程に位置付けることによって、近代日本の政党政治における地域性と党人派・官僚派の対立の克服に、伊藤系官僚派の原敬の分析だけでは明らかにされない視座を提示する。
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