2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03393
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮原 克典 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 他者 / 知覚 / 社会認知 / )心の理論 / 現象学 |
Research Abstract |
社会認知をテーマにした学際的研究の中心的課題は「アクセス問題」に答えること、つまり、ひとはどのようにして他者の心という、いわば"隠された存在"にアクセスすることができるのかを明らかにすることだと考えられている。しかし、ごく最近になって、社会認知に関する「知覚説」という見方が提出されており、それによると社会認知研究の中心問題はアクセス問題ではない。知覚説は、現象学的哲学に依拠しながら、他者の心は他者の身体において「直接に」経験されるものであって、"隠された存在"などではないと主張し、他者知覚(他者に関する知覚経験)の構造が正しく理解されれば、アクセス問題は解消されるはずであることを示唆する。それに対して、本年度の研究では、他者知覚の構造が正しく捉えられたとしても、ただちにアクセス問題が解消されるわけではないことを明らかにした。つまり、どのような社会認知理論もアクセス問題をたんに回避するわけにはいかないということである。その理由はアクセス問題が他者の心に関する根本的な直観に基づくものであることである。本研究では、その直観を他者知覚理論に対する三つのアプリオリな制約へと展開し、それぞれ「直接性制約」(Immediacy constraint)、「超越性制約」(Transcendence constraint)、「アクセス可能性制約」(Accessibility constraint)と名付けた。つまり、他者知覚とは「いま知覚されている身体に尽くされないが、知覚的探究による解明を拒否するわけでもない他者をただちに経験する」という多面的な現象であり、この多面性を一度に考慮できない限り、いかなる他者知覚理論も十分なものと認めることはできない。本年度の研究では、これらの制約に一定程度まで対応できる理論を提案し、そうした見方を「共現前説」(co-presentation account)と呼んだ。しかし、現時点では共現前説については素描がえられているにすぎない。その詳細を展開することは来年度以降の課題として残る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究内容の点では「おおむね順調」とも言えるが、本年度の実施計画の最初の項目に設定されていた「博士論文を完成させる」という課題が達成されなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは博士論文の執筆に専念する。 博士論文の完成は遅れているが、研究内容の面での進展に大きな問題点はないと思われる。
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Research Products
(3 results)