2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03393
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮原 克典 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現象学 / 認知哲学 / 身体性 / 知覚 / 他者認知 / エナクティヴ・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
認知哲学における「エナクティヴィズム」と「現象学」を融合した「エナクティヴ現象学」の立場から、知覚と他者認知に関する哲学的分析をおこなった。とくに、それらが「頭の中」で展開する過程ではなく、身体を用いて行われるダイナミックな過程であることを明らかにした。 知覚について:近年の認知哲学で注目の知覚論として、アルヴァ・ノエの「知覚のエナクティヴ説」がある。エナクティヴ説によると、知覚は一種の身体的行為にほかならない。本年度の研究では、20世紀フランスの現象学者M・メルロ=ポンティの知覚論を手がかりにしながら、エナクティヴ説をめぐる議論のレビューをおこない、また、この立場が知覚の科学研究に対してもつ意義を考察した。それによって、知覚を一種の身体的行為だと考えるためには、それを「事物の現れを変形させるダイナミックな過程」だと理解する必要があることを明らかにした。また、この見方にしたがえば、行為に関する科学研究と同様のアプローチで知覚に関する科学研究をおこなう余地があることを示した。 他者認知について:2013年度の研究では、他者知覚が「他者の直接性」、「他者の超越性」、「他者のアクセス可能性」という基本的な特徴としてもつことを示した。本年度の研究では、メルロ=ポンティの他者経験論を手がかりに、どうして他者知覚の経験が「他者の直接性」と「他者の超越性」という特徴を持つことができるのかを考察した。それによって、他者知覚に「直接性」と「超越性」という特徴があるのは、身体的な相互行為から生じる「受け身の意識」を本質的な要素として含むからだと明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題のテーマである「他者認知における情動の志向的役割」を明らかにするためには、まずは情動的かどうかは別にして、他者認知を構成する意識の働きの全体像を把握する必要がある。その点については本年度の研究で一定の成果がえられた。しかし、その作業に予想以上の時間がかかり、それを「情動の志向的役割」という観点から捉え直す段階まで研究を進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
採用1年目に提出する予定だった博士論文の完成を最優先の課題とする。その後に本研究課題を計画していた通りのスケールで遂行するのは難しいと思われる。そこで、2015年度の研究では、他者認知と情動の関係に関する研究状況のレビューをおこなうことを目標に研究を推進する。
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Research Products
(5 results)