2015 Fiscal Year Annual Research Report
シンガポールにおける女性の所得階層と福祉供給の諸類型に関する研究
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13J03419
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
落合 絵美 同志社大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会保障 / ジェンダー / ケア / シンガポール / 女性労働 / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代シンガポールにおいて福祉がどのように供給されているのか、その全体像を明らかにするものである。 シンガポールの所得格差(ジニ係数)は中国(41.5)や米国(45.0)を上回る47.8(CIA計算)であるにもかかわらず、公的社会サービス支出額(対GDP)は最貧国水準である。なぜ先進国でありながら、これほどまで公的社会サービス費用を抑制できるのか。 シンガポールの福祉体制について正確に理解するためには、所得階層や雇用形態によって階層化されている福祉サービスの全体像を掘り起こす必要があることから、本研究では同一企業内に就労する所得階層および雇用形態の異なる男女労働者に注目し、彼ら彼女らが日々の生活のなかでどのような福祉サービスにアクセスしているのかについて聞き取り調査と参与観察を用いて考察するものである。 2年度目にあたる本年度は、シンガポールにおける社会保障制度について、年金、医療、介護、地域福祉(非営利団体)、そして生活保護などの制度を中心に考察・検討した。これにより、シンガポールにおける福祉レジームについて制度面から包括的に理解することができた。 2年度目が主に制度設計の分析であったのに対して、続く3年度目は実際に人々がどのようにして福祉サービスを利用しているのか、その実態の解明をインタビュー調査および参与観察を通じて実施する。これにより、制度および実態の両面から「シンガポール福祉システム」を解明することが可能になると同時に、なぜ公的社会サービス支出額がこれほどまでに著しく抑制可能なのか、その答えが明らかになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産・育児に係る研究中断・再開準備支援期間を経たことから、現地調査(長期)の時期が当初の研究計画に記載した2年度目から3年度目へと延期になっている。 この点において当初の研究計画に比べて遅れが見られるものの、調査対象国であるシンガポールの受け入れ機関(シンガポール国立大学)の協力を得て3年度目より在外研究をスタートさせており、すでにプレ調査に着手している。 研究計画を確実に遂行するため、引き続き研究計画に沿った調査・研究活動を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実態把握のためのインタビュー調査については、受け入れ機関(シンガポール国立大学)教員の助言・協力を得ながら調査対象企業に対して調査依頼を行う予定である。 万が一、入念な準備を経て依頼したにもかかわらず調査への協力を拒否された場合については、同じく女性労働者が数多く就労し、かつ多様な雇用形態で就労する他業界(例:ホテル業、金融業)への変更、もしくはスノーボールサンプリングによる調査対象者への接触へと変更する可能性もあるが、調査対象の変更についてはあくまでも研究目的を達成するための最終手段であり、引き続き当初の研究計画に記載した調査内容に沿った研究活動を遂行する。
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Remarks |
ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク主催「働く女性の教養講座」講師「シンガポールにおける社会保障制度と女性のライフコース」2016年2月6日、大阪ドーンセンター。 同志社大学社会学部教育文化学科「海外教育事情」外部講師「シンガポールにおける教育制度―能力主義と格差社会―」2015年12月17日、同志社大学。
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