2015 Fiscal Year Annual Research Report
数理的アプローチからの言語動態の可視化及びモデル化に関する研究
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13J03462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野原 彩香 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本語学 / 言語変化 / 数理的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地域性、社会構造の異なる複数の小規模な地域を対象として、言語形式と言語外的要因の定量的関係を把握し、言語変化の微細な動態の把握を目的としている。 平成27年度は、岐阜県美濃地方・滋賀県米原市付近を対象地域とした。米原市の市民グループ「はびろネット」の依頼により、岐阜県関ヶ原町および滋賀県米原市の3世代(中学生、親世代、祖父母世代)を対象とした方言調査の設計及び分析に携わった。調査の目的は、県境を挟んでの方言差の有無、学区差の明示であった。調査実施期間は平成27年11月21日~12月20日、調査規模は809人(有効回答率92.6%)、調査項目は40項目106語(語彙29項目、文法11項目、若者言葉・学校方言8項目)であった。アンケート調査の実施とデータ入力は、はびろネットが主導し、データクリーニングとデータ分析は当方が担当した。分析内容は、県境差、学区差、年齢差を示すための対応分析、地域差を示すための対応分析・系統推定・クラスター分析、世代変化についての地図上での可視化である。分析の結果、地理的に隣接していない街道沿いから外れた集落に共通の古い方言形式が残存すること、境界域の集落において東西両方言の受け入れ方の違いがあること、東西方言の境界でありつつも独自性が存在すること、調査項目の82.1%を中学生世代がほとんど使用していない(使用率10%以下もしくは祖父母世代から20ポイント以上の減少)こと、一方で中学生は親世代が使用しない古い形式の方言を予想外に使用していることが明らかとなった。 また、現地の方言研究者である杉崎氏と共に中山道沿い(岐阜県大垣市~滋賀県彦根市)の高年層を対象にした調査を行い、音響分析に耐えられる録音音声データを収集した。なお、実際の調査は主に杉崎氏が行い、当方がデータクリーニングを行うことで、基本周波数に関する分析を行える状態にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すべての調査を終了し、一部は、報告書「滋賀・岐阜県境を越えた方言アンケート調査報告」(はびろネット、小野原彩香、杉崎好洋)としてまとめた。また、成果の公表には至っていないものの、調査データに関する数理的分析、既存研究のデータクリーニングに着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実施計画としては、既存研究結果への方法論の適用を行っていく必要がある。今年度までに、先行研究における方法論の整理、既存研究のデータクリーニングに着手している。残りの期間で、先行研究における方法論と当該研究における方法論の比較を行い、問題点を整理した上で、方法論の適用を行う予定である。成果の公表については、以下の各項目について公表の可能性と必要があると考えられ、公表のための準備を急ぐ必要がある。1.岐阜県と滋賀県の県境を中心に実施した3世代調査は、報告書の作成に留まっており、言語データについての分析のみが完了している。このため、言語外的要因との関係を多変量データとして分析し、両者の量的な関係を捉える必要がある。2.前年度までに、香川県小豆島地域のアクセントを対象として言語形式と外的要因についての多変量解析を行い、一定の成果を得ている。このため、アクセントに関する全国的なデータを同じ方法で分析、結果を比較し、一般性を導く必要がある。
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Research Products
(1 results)