2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁気デバイスの磁気緩和に関する理論と第一原理計算手法の確立
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13J03505
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
兵頭 一茂 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 異常ホール電導度 / 磁気異方性定数 / 第一原理計算 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
本年度は以下の内容について成果を挙げることができた. "bct-Fe_<50>Co_<50>合金における異常ホール効果と磁気異方性の定量的関連性の評価" 「異常ホール効果」と「磁気異方性」は, 本研究課題の「磁気緩和現象」と同様に磁性体を用いたデバイス応用に関して重要なパラメータである. これら3つの物理現象は共通して物質中の「スピン軌道相互作用」が主要な起源とされており, 互いに相関があることが予想される. しかし, 現実の物質を想定して実際に評価を行った例はほとんどないのが現状である. 本研究は「第一原理計算」を用いてこれらの物理量の関連性について定量的評価を行い, 複数の物理量の観点から将来の磁気デバイス材料の提案に際し, 大局的知見を与えることを狙いとしている. 今年度はbct-Fe_<50>Co_<50>合金について, 結晶の格子をbcc構造から歪ませた際の異常ホール電導度σ_xyと磁気異方性定数K_uの変化の関連性について研究を行った. 本材料はc軸とa軸の格子定数比を1.25近傍にすることで, フェルミ面付近でのスピン軌道相互作用による状態の混成が増強され, 巨大なK_uを示すことが指摘されている. 本研究では同材料についてσ_xyとK_uのc/a依存性を計算し, σ_xyの挙動をK_uと比較することで二つの物理量の定量的関連性を調べた. 結果として, 2つの物理量はc/a=1.25近傍で共に極値を示し, 現実の系においてバンド構造の変化によるスピン軌道相互作用の混成の増強が両者に同様の影響をもたらすことが判明した. また, 2つの物理量を起源であるスピン軌道相互作用で混成する状態の軌道毎に分類したところ, c/a=1.25での双方の物理量の極値はダウンスピン・d軌道・磁気量子数m=±2の状態間混成から主に発生しており, 混成する状態の観点からも強い相関がみられることが確認された. 本研究により現実の系において, バンド構造の変化によるスピン軌道相互作用の変化がσ_xyとK_uに共通の影響をもたらすことが初めて示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究テーマの初年度にも関わらず国際学会, 国内学会での発表一回ずつ, また論文を一報掲載することができた. この成果は早期に第一原理計算手法の習得に取り組み, 研究に打ち込むことができたためであると考えている. 次年度以降も新たな計算手法の開発・習得を積極的に行っていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は"bct-Fe_<50>Co_<50>合金における異常ホール効果と磁気異方性の定量的関連性の評価"を行い, 現実の物質において2つの物理現象に強い関係性があることを示した. しかし本研究では現実の合金作成時に起こりうる原子配置の不規則性を考慮できていない. そこで次年度はまず, 同材料について原子配置の不規則性をパラメータとして変化させた際に異常ホール効果と磁気異方性の関連性がどのような挙動を示すか調査する予定である. 原子の不規則性はコヒーレントポテンシャル法を新たに取り入れることで計算が可能であると考えている. また, 併せて磁気緩和現象の評価を行うため, 計算手法の開発に取り組んでいきたい.
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Research Products
(3 results)