2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁気デバイスの磁気緩和に関する理論と第一原理計算手法の確立
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13J03505
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
兵頭 一茂 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気異方性定数 / 第一原理計算 / 積層構造磁性体 / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の内容について成果を挙げることができた. “Rh下地層上に積層されたbct-Fe50Co50合金の磁気異方性に関する理論的評価” 結晶磁気異方性は磁性体の磁化方向の安定性を司る性質である.磁気デバイスにおいては,本課題で取り扱う磁化緩和現象が動作時の消費電力に関連すると共に,結晶磁気異方性が磁化情報の安定性に大きく寄与するため,両者の最適化が求められている. 今年度はこの磁気異方性定数Kuに関する評価を,Rh上に積層されたbct-Fe50Co50合金に関して実行した.本材料は,Rhとの格子ミスマッチによりFeCo合金がbcc構造から歪むことで大きなKuが得られることが指摘されており,その理論的評価が求められている.しかしながら,既存の理論研究の大半は下地層を考慮しておらず,Rh層がbct-FeCoのKuに与える理論的評価はほとんどなされていない.本研究では,Rh層上にFeCo層を積層した系を想定し,系のKuを第一原理計算によって評価した. 結果として, Rh層が存在する場合,系のKuはFeCoが独立に存在する場合と比較して低下し,Rh下地層がFeCoの磁気異方性を低減する方向に働くことが分かった.考察として,FeCo層別のKuへの寄与を評価したところ,Rh層自体はKuにはほとんど寄与しないが,Rhに近接するFeCo層のKuがRh層から離れた層と比較して大きく低下していることが明らかとなった.さらにバンド構造の観点からRhに近接したFeCo層とRhから離れたFeCo層を比較した.すると,Rh近接層ではKuに寄与する電子状態がRh層との電子状態の混成によって失われており,電子状態の観点からもRh層下地層がKuを下げる働きを持つことを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に加えて新たな計算手法の習得に努めた.その結果,新たに積層構造の磁性体における物理量の理論的評価が可能となり,より現実の磁気デバイス中の材料に近い形での計算を行うことができた.このような研究の取り組みの結果,本年度は論文出版を1本,学会発表を3件という成果を残すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度,本年度では,磁化緩和現象と同じくスピン軌道相互作用を起源とする異常ホール効果,磁気異方性に関する研究を行ってきた.このうち異常ホール効果については,類似した異常ネルンスト効果を用いた熱電発電デバイスが近年提案され,物理面だけでなく応用面からも異常ホール効果の更なる理解が求められている. このような状況を踏まえ,来年度は異常ホール効果の物質依存性に関して,第一原理計算を用いて取り組みたいと考えている.本分野に関する現状の課題として,第一原理計算を用いた各材料の異常ホール伝導度の理論的評価はある程度なされているものの,物質の個別性に関する理解が不足していることが挙げられる.本研究においては,理論的評価と共に結果を電子状態から理解することを重視した研究を行い,物質の電子状態の観点から異常ホール効果の向上に関する指針を得ることを目標としたい.
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Research Products
(4 results)