2014 Fiscal Year Annual Research Report
正当化装置としての正義:正義ラベルが攻撃行動の評価に及ぼす影響過程の検討
Project/Area Number |
13J03530
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺口 司 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラベリング / 集団間葛藤 / 第三者 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究は、集団間攻撃場面において加害者へのポジティブなラベルがその攻撃の評価にどのように影響するのかを、第三者の評価者という視点から検討することを目的とした。 【具体的内容】昨年度はラベリングと攻撃評価に関して、攻撃評価そのものについての基礎的な知見、およびラベリングと攻撃評価の関係性に関する知見という2つの知見を蓄積すべく、4つの研究を行っている。攻撃評価の基礎的な知見については、場面想定法を用いた調査を行った。その結果、加害者や周囲の観衆たちは加害者の内集団成員が加害者の行動をよりポジティブに捉えているに違いないというバイアスを持っていることが示された。このバイアスは加害者の内集団成員も持っており、加害者の内集団成員も実際にはポジティブに評価していないものの、そのような認知のギャップのみがあることが示された。一方で、第三者に対してはこのようなバイアスがなく、攻撃行動の意図においても第三者の判断が影響を与えることが示唆された。また、ラベリングと攻撃評価の影響については、平成25年度の実験データの再分析、および同パラダイムを用いた実験を行った。その結果、NL戦略は加害者の内集団成員による評価を高める一方で、第三者にはその影響は認められず、第三者に対してはPL戦略が加害者への評価を高め、加害者へのネガティブな行動反応を減らすことが示された。その一方で、ラベリング内容によって攻撃評価に影響を与えないことも示唆された。 【意義・重要性】以上より、第三者は攻撃行動をポジティブに評価しておらず、また、加害者も第三者によるポジティブな評価を予測していないことから、攻撃行動生起において第三者の存在が重要であることが示唆されたと言えるだろう。その一方で、加害者は攻撃時にラベリング戦略を使用することによって、その第三者が攻撃行動をよりポジティブに評価する危険性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究によって、ポジティブなラベリングがもたらす加害者と第三者とのネガティブなダイナミズムの一端、さらには攻撃評価の基礎的な知見を示唆できた。この知見は他の攻撃心理学に対しても重要な基礎知見となりうる。また、前々年度の結果と異なり、ラベリング内容によっては攻撃評価に対して影響を与えないことも示唆された。しかし、ラベリングが攻撃評価に与える影響についての心的プロセス、および境界条件はいまだ示すことができていない。以上を踏まえ,総合的な評価としては②に留まると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においてまず必要なのは、ラベリング戦略が影響を与える場合と与えない場合の境界条件を検討することである。本研究では加害者側の要因から検討を行ったものの、その点からは明らかとならなかった。そこで、今後は評価者側の要因からラベリング戦略が攻撃評価に影響を与える、その境界条件について検討を行う。 また、最終的なモデル構築のため、加害者・被害者・第三者が含まれる、3集団間での集団間葛藤場面の中でラベリング戦略の影響を検討する、実験的検討を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)