2013 Fiscal Year Annual Research Report
革新的創薬を目指した環状ペプチドライブラリーの構築
Project/Area Number |
13J03534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長野 正展 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | キナーゼ / リン酸化 / 翻訳語修飾 / RaPID / リボソーム翻訳合成 |
Research Abstract |
セマフォリンを標的タンパク質として薬理活性な環状特殊ペプチドを探索することを当初の研究目的としていたが、今回"キナーゼ活性を有する環状ペプチドの探索"を主たる研究目的として小修正した。これは申請研究である『革新的創薬を目指した環状ペプチドライブラリーの構築』という主旨からは外れておらず、むしろ大挑戦型の試みであり、目標達成時には学術的価値・社会的還元力がより高い研究と位置づけられる。以下に平成25年度の研究実績の概要を記述する。 リン酸化は最もよく見られるタンパク質翻訳後修飾反応であり、多くの生理現象に関与している。このリン酸化を触媒する酵素(キナーゼ)を自由自在に合成、あるい発現できれば、多くの生命現象を解明できるだろう。しかしながら、人工キナーゼを設計するには、リン酸転移反応という素反応制御に加え、基質タンパク質への官能基選択性、そして位置選択性を確保しなければならない。そのため、化学あるいは生物学的のみよりなるキナーゼ合成アプローチには限界があった。本研究では、化学と分子生物学をハイブリッドしたRaPID (Nature, 2013, 247)という技術に着目し、キナーゼペプチドをde novo合成することに挑戦する。 一年目は、A : テンプレートDNA設計と調整、B : リン酸化ペプチドの選択的回収技術の確立 の二点に関して検討を行った。項目Aでは、キナーゼ活性を発生させるペプチドライブラリーとリン酸化する基質とするヒストンH3ペプチドを連結した'シス型(触媒-基質一体型)'のペプチドライブラリーを設計し、その鋳型となるDNAを合成した。項目Bでは、上記で得られたクローンのペプチドを用いて、実際にキナーゼ活性を有するペプチドが回収できるかどうかを精査した。すなわち、基質ペプチドを酵素キナーゼを用い、基質が環状ペプチドによりリン酸化できMock条件を作り出した。この条件で、チオリン酸化されたペプチド-DNA-RNA共役体のみがアルキル化反応により選択的に回収できないか併せて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キナーゼ活性を有する特殊環状ペプチドを探索するための、一兆個の異なるペプチド配列をコードしたDNAライブラリーの作製に成功した。また、キナーゼ活性を有する環状ペプチドの代わりに購入したキナーゼを用いたMockのセレクション系をデザインした。その結果、チオリン酸化したペプチドでは、チオリン酸基のアルキル化反応に続くチオリン酸エステル抗体を用いて選択的に回収できる手法を開発することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、実際にチオリン酸化を触媒するペプチドのRaPIDを使用したセレクションを行う。起こりえる問題として可能性としては、標的であるH3ペプチドをチオリン酸化するペプチド種は、従来RaPIDで取り扱う単に任意のタンパク質に結合するペプチド種よりも圧倒的に数が少ないことが予想され、失敗する可能性がある。よって、チオリン酸化されたペプチド種を100%に近い回収率にできるセレクション系が理想であるため、セレクションの各段階でロスがないようモニターする方法を構築し、回収率を最適化する検討を綿密に行っておく。
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