2013 Fiscal Year Annual Research Report
唐・五代期の僧尼の書儀・書簡文に関する文献学的考察
Project/Area Number |
13J03545
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 孝子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 唐五代 / 書儀 / 書簡文 / 敦煌 / 『五杉練若新学備用』 |
Research Abstract |
当初の予定通り、世界各地に所蔵される原本調査に重点を置いて進めた。特に二月にはフランス国立図書館および大英図書館にはそれぞれ一週間ほど滞在し、敦煙発見の書儀・書簡文を実見した。この期間に得られた成果は次年度以降に公表する予定である。 今年度は『五杉練若新学備用』の研究を課題として設定していたが、こちらについては口頭発表一回、論文一本を成果として提出することができた。『桃の會論集』に寄稿した論考は、昨年度末の口頭発表を基にしたものである。その内容は五杉練若新学備用(五杉集)』巻中の巻末に見える「十二月節令往還書樣」「四季惣叙」を扱うもので、その書儀としての特徴について考察した。考察の対象とした「十二月節令往還書樣」「四季惣叙」は、巻中の他の部分と比べてやや特殊な形式で記されており、應之のオリジナルのテキストには含まれておらず、後人(特に俗人)の加筆、あるいは他本からの紛れ込みのではないかという点を指摘した。但し、書簡中に用いられる表現の分析から成立年代は『五杉集』と遠からざる時期に比定できるとの見解を示した。 七月の中国文学会における口頭発表では、同じく『五杉集』巻中に基づき、「三幅書」という凶儀における書簡の様式について私見を述べた。「三幅書」についてはこれまで司馬光『書儀』に言及があるものの、どのような様式が不明であったものが、『五杉集』が公開されたことにより初めて具体像が復元可能となったものである。これまで知られていた「単書」「複書」との比較を通して各様式の使い分け、使用範囲の確認を行った。その結果、単書と複書・三幅書は敦煌吉凶書儀の場合と同じく亡者と孝子の関係に基づき決定されること、複書と三幅書は差出人と受取人が居る場所の距離や移動にかかる日数によって使い分けられていたことが見えてきた。さらに、宋代の婚礼に関わる書簡にも「三幅書」の形式を見出すことができたことから、五代期の凶儀の書簡に特有の様式ではないことを明らかにした。単書、複書、三幅書の紙数などまだ十分に解決できていない問題も残っており、引き続き検討を行い、次年度以降論文としてまとめ公表したいと考えている。 この他、8-9月の二か月間は台湾に滞在し、国立成功大学・王三慶教授のもとで研究を進めたほか、中国・甘粛省金塔県で開催された「金塔居延遺址与糸綢之路歴史文化国際学術研討会」に参加し、「書儀中的伝統与通俗習慣―有関女性的記載」として女性に関わる書札礼についての問題を取り上げ、口頭発表を行っており、論文としてまとめたものは同論文集に寄稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『五杉練若新学備用』および敦煌発見の書儀・書簡文については当初の予定通り順調に進んでいる。一方で、唐・五代期のその他の資料についてはまだ軌道にのっておらず、次年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 今年度中に行った調査の成果や口頭発表の内容をできるだけ早い時期に論考にまとめ公表する。 (2) 引き続き『五杉練若新学備用』の考察を進める。 (3) 唐・五代期に記された関連する文献の整理・分析を進め、当初の計画を確実に遂行してゆく。得られた成果は逐次発表していきたい。
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Research Products
(4 results)