2013 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系I複合体を中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤解明
Project/Area Number |
13J03550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河合 寿子 (久保田 寿子) 大阪大学, たんぱく質研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 光合成 / X線結晶構造解析 / 電子伝達複合体 / 光化学系 / photosystem / ferredoxin / PSI / Fd |
Research Abstract |
光化学系I(PSI)は、光エネルギーをもとに光電変換反応を行う蛋白質複合体である。光合成生物の生体内に於いて、チラコイド膜の内側にPSIへ電子を供給する系(PSI還元系)、外側にPSIから電子を受容する系(PSI酸化系)が存在している。そして、これらの「PSI酸化還元系」と光電変換反応系を有機的に連結させることで、効率よく光エネルギーを化学エネルギーに固定している。本研究では、PSIと電子供与/受容蛋白質が電子授受反応を行っている複合体状態の構造を解析し、PSIを中心とした電子伝達メカニズムを解明することを目的としている。 1、PSI還元メカニズムの構造基盤解明 : PSIを還元する蛋白質であるプラストシアニンを大腸菌で発現する系を構築した。また、ラン藻Synechocrystisから均質なPSIを得るためにPsaF-His1/ΔPsaK2株を作製した。 2、PSI酸化メカニズムの構造基盤解明 : 好熱性ラン藻T. elongatusを用いて、PSIとPSIを酸化する蛋白質であるフェレドキシン(Fd)が形成する電子伝達複合体について、X線結晶構造解析法とNMR分光法にて相補的に解析した。PSI-Fd複合体結晶構造は4.2Å分解能で決定することに成功した。その結果、FdはPsaC、PsaE、PsaDが形成するポケットに結合しており、Fdの[2Fe-2S]クラスターがPSIのF_Bから8Åの距離に位置すること、またFdとの分子間相互作用にはPsaA、PsaC、PsaE上のアミノ酸が関与していることを確認した。さらに、溶液状態でのPSI-Fdの相互作用を^<15>N-Fdを用いた(^<15>N, ^1H) HSQC化学シフト摂動法により解析し、Fd上の相互作用アミノ酸を同定した。これら二つの手法で得られた結果は互いによく一致しており、X線結晶構造解析の結果は溶液中の複合体形成を反映していると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PSI酸化メカニズムの解明についてはPSI-Fdの結晶化条件の最適化を行い、質のよい結晶を得ることまでを目標としていたが、当初の計画以上に進展しPSI-Fdの複合体構造を得ることに成功した。還元メカニズムの解明については、SynechocystisのPsaF-His/ΔPsaK2株を用いてPSI単体の高分解能原子モデルを得ることを目標としていたが、現在良質の結晶を作製中であり当初の計画よりやや遅れている。総合的に判断し、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、PSIとFdが複合体を形成する際に相互作用していると考えられるアミノ酸ペアが同定された。今後の課題は、これらのアミノ酸に変異を導入したFdを作製し、PSIとの相互作用への影響をFdアフィニティークロマトグラフィーなどで確認することである。
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Research Products
(3 results)