2014 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系I複合体を中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤解明
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13J03550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河合(久保田) 寿子 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系I / フェレドキシン / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光化学系I(PSI)とその電子供与/受容蛋白質が電子伝達反応を行っている複合体状態のX線結晶構造解析を行い、PSIを中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤を解き明かすことを目的とする。本年度の研究の成果は以下の二点である。 1. PSI還元メカニズムの構造基盤解明:PSIを還元する蛋白質であるシトクロムc6(Cytc6)の大量発現系を構築した。ヘム鉄を組み込むシャペロンを発現する大腸菌CCM株を利用することで、効率よくCytc6にヘム鉄を配位させた。また、Cytc6を大腸菌のペリプラズム領域に輸送させるシグナル配列を付加することで、簡便に高純度で精製することが可能となった。 2. PSI酸化メカニズムの構造基盤解明:前年度にT.elongatusを用いて4.2Å分解能でPSI-フェレドキシン(Fd)の構造を決定した。本年度は、構造から得られた複合体形成に重要なアミノ酸が、生化学的にも重要であるかを確かめた。具体的には、FdのPSIと相互作用するアミノ酸の変異体を13種類作製し、PSIとのアフィニティー実験を行った。その結果、多くの変異体でアフィニティーが変化しており、特にFdのヘリックス上にあるアミノ酸Y97、E93が複合体形成に重要であることが明らかとなった。さらにFd結合前後のPSI構造を比較することで、FdによるダイナミックなPSIの制御機構を解き明かした。Fdが結合することで、PsaC、PsaEのみならず、PSI還元蛋白質が結合するPsaFも構造変化しており、チラコイド膜を挟んだルーメン側とのクロストークを捉えることができた。また、Fd結合に誘導されてPSI三量体の各プロトマー間に位置するPsaKとPsaBが互いに近づいていた。このことから、PSI三量体間で光エネルギーを共有する二分子アンテナモデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PSI酸化メカニズムの解明についてはPSI-Fdの複合体構造をもとに得られた相互作用アミノ酸が重要であることを、生化学的な手法を用いて確認するという目標を達成できた。さらに、当初よりも構造比較計算が進展し、FdによるPSIの制御機構を解き明かすことにも成功した。還元メカニズムの解明については、T.elongatusのCytc6の大量発現系を構築し、PSIとの共結晶化スクリーニングにより59条件において結晶を得ることに成功した。PSIとCytc6の混合サンプルをSDS-PAGEにて分離すると、PSIのサブユニットであるPsaDとCytc6のバンドは殆ど同じ位置に検出される。そのため、得られた結晶中にCytc6が含まれているかを確認するためにはウエスタンブロットを行うことが必要となり、Cytc6の抗体を作製した。今後はこの抗体を利用して、結晶中にCytc6が含まれている結晶を選別する必要がある。以上のことを総合的に判断し、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、PSIとFdが複合体を形成する際に相互作用していると考えられるアミノ酸が生化学的にも重要であることが示された。今後の課題は、Fd結合に由来するPsaFの構造変化を詳細に解析し、PSI還元側とのクロストークに関する知見を得ることである。また、PSI還元メカニズムの解明に向けてPSIとCytc6の複合体結晶構造解析を行う。現在、1000条件以上の共結晶初期スクリーニングにおいて、59条件で結晶が得られ、そのうち6条件で単結晶が得られている。この中の1条件において結晶を回収し、ウエスタンブロットによりのCytc6の有無を確認したが、結晶中にCytc6は存在していなかった。今後は残りの結晶の中でCytc6が含まれている条件を探索する。共結晶が得られれば、X線回折実験により結晶の質を評価しながら結晶化条件の最適化を行う。また、同時に不凍剤の種類や浸透方法を慎重に検討する。その後、放射光X線(SPring-8のBL44XU)にて回折実験の最適化を行う。各結晶に最適なX線露光時間や一カ所あたり何枚の回折強度データがとれるかなど予備実験により決定する。また、モザイク性が高い場合は振動角度やディテクター距離を検討する。結晶とディテクター間のヘリウムパス設置によるバックグラウンドの低減や液体ヘリウムを用いた結晶凍結によるX線照射ダメージの軽減も試みる。このようにして最適化された条件で最高の回折データを収集する。得られた回折強度データをもとに、Jordanらが決定した2.5Å分解能のシアノバクテリアT. elongatusのPS1構造、Bialekらが決定した1.2Å分解能のCytc6構造を初期モデルに用いた分子置換法によって位相決定を試み全体構造を決定する。
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Research Products
(4 results)