2013 Fiscal Year Annual Research Report
捕食者の共食いの生態学的意義 : 個体の特徴に注目して
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13J03564
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高津 邦夫 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共食い / 捕食-被食相互作用 / 大型化 / トップダウン効果 / ストイキオメトリー |
Research Abstract |
本研究の目的は、群集レベルでの捕食者の共食いの効果を探索し、そして、そのメカニズムを明らかにすることである。この目的を達成するために、私はエゾサンショウウオ幼生の共食いを対象に研究を行っている。昨年度は、二つの研究に取り組んだ。 一つ目の研究では、サンショウウオの共食いを操作することで、サンショウウオがエサ群集に与えるトップダウンの効果が共食いによってどのように改変されるかを実験的に調べた。実験の結果、サンショウウオの共食いは大型エサ種に対する捕食圧を強めるが、一方で、小型エサ種に対する捕食圧を弱めることが分かった。このようなエサ種特異的に働く対照的な効果の結果として、捕食者種の共食いはエサ群集の組成を改変した。 二つ目の研究では、サンショウウオの共食いを操作することで、サンショウウオの排泄による栄養塩供給がどのように改変されるのかを実験的に調べた。実験の結果、共食いに成功した個体は、そうでない個体に比べて排泄を通してより質の高い栄養塩をたくさん供給することが分かった。このような個体レベルの排泄を通した栄養塩供給の違いは、共食い集団と非共食い集団の排泄を通した栄養塩の供給量や質の違いまでも生み出した。共食い集団は非共食い集団よりも個体数が少ないにもかかわらず、より質の高い栄養塩をたくさん供給した。排泄を通した栄養塩供給は一次生産者にとっての重要な資源供給であり、その量や質は、一次生産者の個体数だけでなく、その種組成にも影響を与える事が知られている。今回の結果は、共食いが栄養塩供給の改変を通して一次生産者群集に影響を与えるという、共食いの群集レベルでのインパクトに関する新たな経路を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度計画していた実験はすべてこなすことができた。結果もおおむね期待していたことに近いものが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、実験室内や野外実験池での操作実験を通して、捕食者の共食いの生態学的意味を探索してきた。今後は、野外調査を取り入れて、これまで実験的に示したことが、雑多な要因が含まれた自然環境でも、働いていることを確めなくてはいけない。
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Research Products
(2 results)