2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩原 佳典 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 名望家 / 地域教育史 / 幕末維新期 / 松本藩(筑摩県) / 近代学校の創設 / 「開化」のメディア / 自由民権運動 / 地域秩序 |
Research Abstract |
本研究課題は、近世から近代までをひと貫きに見通す地域教育史像の構築を目指すものである。 25年度は第一に、学校設立を地方レベルで担った人びとについて、近世以来の存在形態や立場性が異なっていたことを指摘し、その意味を検討した。従来は「地域指導者層」などと一括りにされがちであった学事担当者たちについて、近世以来の身分的出自と文化・政治・経済的力量を異にする多様な人びと(名望家層)で構成されていたことに着目した。「御一新」に伴い地域社会の支配体制や身分秩序が流動化するなか、近代という時代に対応した形で自家の地位や名望を保持すべく、「開化」政策の担い手となっていった中間層の動きを具体的に解明した。以上の成果は、『日本教育史研究』32号(日本教育史研究会)にて公表した。 第二に、明治10年代の地域社会において、民権派教員あるいは学区取締や学務掛などとして、近代教育の推進に関わっていた人びとの存在に注目した。これまでは、個々の対象を別々にとらえる傾向にあり、多様な動向を同じ地域社会の文脈から比較・検討する視点が弱かった。これに対し、一定の地域に対象を限定し、そこで生活していた複数の人びとを名望家層として同時に見通し、近代教育をめぐる位相を相互の関係性から解明した。その結果、近代教育をめぐる両者の位相をとらえ、そこで提起されていた近代学校の構想を浮かび上がらせた。以上の成果は、『日本の教育史学』56集(教育史学会)にて公表した。 以上の成果に加え、新たな史料群の調査・整理にも並行して取り組んだ。具体的には、松本藩時代に大庄屋を代々勤めてきた家の史料整理を開始しており、近世前・中期へと射程を拡げる26年度以降の研究課題を遂行するうえで有効な史料の発見が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、平成24年度に提出した学位論文をまとめ直し、内容の充実をはかるとともに、史料分析の確度を高めた。学位論文提出時点で未発表であった論文2本も、いずれも全国学会機関誌に採録された。さらにその成果は書物にまとめられ、平成26年度内に出版されることが決まっている。また新たな史料発掘にも精力的に取り組み、未整理の史料群の調査にも着手してきた。よって、本研究課題の遂行は現在までのところ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の2年目となる26年度は、引き続き新出史料の整理・解読につとめ、その成果をもとに学会報告・論文投稿を行う予定である。25年度は、論文投稿による成果発表は順調であったものの、論文執筆に専念するあまり、学会報告などの口頭発表を行うことができなかった。26年度は、新たに見いだした史料をもとに、その成果を関連学会に積極的に問うていくことで、より多くの研究者たちと議論を重ねていきたい。
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Research Products
(2 results)