2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03600
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
柿嶋 聡 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 進化生態 / 生活史 / 一斉開花 / 周期件 / キツネノマゴ科 / 分子系統 / 集団遺伝 / 沖縄 |
Research Abstract |
周期生物とは2年以上の決まった周期で集団が一斉に繁殖を行ない、死んでしまう生物である。本研究では、キツネノマゴ科のイセハナビ属の周期的一斉開花一回繁殖型植物(周期植物)の進化史を解明することを目的に、実証研究と理論・数理研究を平行して行った。まず実証研究として、野外調査は、沖縄本島で4回、八重山諸島で3回、台湾で2回、それぞれ行った。その結果、沖縄本島では一斉開花が見られるものの、他地域では毎年多くの個体が開花し、一斉開花は見られないことが明らかとなり、生活史に多型が存在していることが明らかとなった。遺伝的な解析では、コダチスズムシソウとその近縁種について分子系統解析を行い、コダチの周期的一斉開花は沖縄本島において、比較的最近に進化したことが明らかとなった。この結果は、周期的一斉開花一回繁殖型が比較的短期間で進化しうることを示した重要な発見である。続いて、コダチスズムシソウの集団間、ブルード(開花年の異なる集団)間の遺伝的な分化を明らかにするため、次世代シークエンサーを用いたRAD-seqによる集団遺伝学的な解析を行った。現在、数百個体について解析中である。さらに、生理メカニズムの検証のため、挿し木で増やした個体を用いて、対照群、高温恒明条件、低温恒明条件、恒明下で高温と低温を3ヶ月ごとに繰り返す操作群の4条件で栽培し、開花までの期間がどのように変化するか観察している。理論・数理研究として、一般的な一斉開花の進化要因として有力な捕食者飽和説と受粉効率説が、コダチスズムシソウの一斉開花の進化における重要性を明らかにするために、シミュレーション解析を行った。その結果、一斉開花の同調性の進化には両方の仮説が貢献しうることが明らかとなった一方で、同調性の維持には、受粉効率説よりも捕食者飽食説の方が重要であり、同調性を獲得するよりも広範な条件で同調性を維持できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、国内外の野外調査を実行し、予定していたデータを測定できた。また、遺伝的な解析として、予定していたマイクロサテライトマーカーの開発ではなく、次世代シークエンサーによるRAD-seqを取り入れることで、安価でより多くのデータを取得することを目指している。さらに、理論研究として、今まで提唱されてきた仮説の有効性について、検証することができた。これらの結果から、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず実証研究として、野外ではコダチスズムシソウだけではなく、近縁種の生活史を明らかにすることで、生活史の祖先形質を明らかにしていく。遺伝的な解析では、RAD-seqを用いて、地域間、集団間、ブルード間での遺伝的な分化を明らかとし、周期的一斉開花一回繁殖型の進化過程を推定していく。生理メカニズムの検証については、操作実験の結果を観察する。理論・数理研究として、周期的一斉開花の同調性の進化メカニズムにおける親子間の光競争仮説と、周期性獲得における繁殖干渉仮説を検証していく。
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Research Products
(5 results)