2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03600
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
柿嶋 聡 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一斉開花 / 進化生態学 / 生活史 / 琉球列島 / 台湾 / キツネノマゴ科 / シミュレーション / RAD-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、6年周期で一斉開花・枯死するコダチスズムシソウを材料に、周期的一斉開花一回繁殖型植物(周期植物)の進化史を解明することを目的として、理論・数理研究と実証研究を平行して行うことにより、研究を進めている。 理論・数理研究として、コダチスズムシソウの周期的一斉開花の進化要因を理論的に検証した。その結果、一斉開花の同調性の進化には捕食者飽和説、受粉効率説の両方が貢献しうることが明らかとなった。さらに、繁殖干渉が存在する場合には、コダチスズムシソウが6年開花型に進化することでオキナワスズムシソウと共存することができることが明らかとなった。 次に実証研究として、野外調査、遺伝的な解析を行った。沖縄本島および八重山諸島での野外調査は7月、1月、3月の3回、台湾での野外調査は4月、11月の2回、それぞれ行った。野外調査では、生活史の観察、種子食害率の測定、遺伝的解析用サンプルの採集を行った。コダチスズムシソウの生活史の観察の結果とこれまでの野外調査の結果を合わせると、沖縄本島では6年周期で一斉開花・枯死する一方で、八重山諸島では一斉開花が起きず、開花後も少数の個体は生存し翌年も再び開花していた。さらに、台湾では一斉開花が起きず、開花後も多くの個体が生存し翌年も再び開花することが明らかとなってきた。 遺伝的な解析では、まずコダチスズムシソウとその近縁種について分子系統解析を行った結果、コダチの周期的一斉開花は沖縄本島において、比較的最近に進化したことが明らかとなった。さらに、集団遺伝学的な解析については、次世代シークエンサーによるRAD-seqを行った。現在、コダチスズムシソウの集団間、ブルード(開花年の異なる集団)間、地域間(沖縄本島、八重山諸島、台湾)の遺伝的な分化を明らかにすることで、周期的一斉開花一回繁殖型の進化機構の解明を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査、遺伝解析、数理研究のそれぞれに進展が見られた。フィールド調査では、翌年の一斉開花現象に向けて、植食性昆虫との相互作用に新たに着目した観察・実験を開始した。遺伝解析では、次世代シークエンサーを活用したRAD-seqを行い、得られたデータのバイオインフォマティクス的な解析を新たに開始した。数理解析では、繁殖干渉という現象に着目し、周期植物の進化に繁殖干渉がどのような影響を与えたか、検証を行った。以上のように、創意工夫により、研究を押し進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
数理解析については、これまでのシミュレーション解析の結果をまとめ、投稿論文を作成する。 フィールド調査については、これまでの琉球列島および台湾での調査を継続して行う。特に今年度はコダチスズムシソウの一斉開花年にあたるため、琉球大学の辻和希教授との共同研究として綿密な調査を行う予定である。 遺伝解析については、RAD-seqから得られたデータについてバイオインフォマティクス的な解析を行う予定である。現在、コダチスズムシソウとその近縁種についての分子系統解析の結果については、投稿論文を作成中である。さらに、ブルード間、集団間の遺伝的な分化についての集団遺伝学的な解析についても、結果がまとまり次第、投稿論文を作成していく予定である。
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Research Products
(7 results)