2013 Fiscal Year Annual Research Report
野生ニホンザル集団におけるコンタクトコールの使い分けとその学習に関する発達研究
Project/Area Number |
13J03612
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝 野吏子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会行動 / 音声行動 / ニホンザル |
Research Abstract |
ニホンザルは毛づくろいなどの社会交渉を行う際に、親和的な意図を相手に伝達する音声を用いることがある。同じ集団内でも普段あまり交渉を行わない相手や、同じ相手でも不安状態が高まっている場合にこの音声を発すると、相手と円滑に社会交渉を行うことができると考えられる。1. ニホンザルはどれほど相手の属性や状態に応じて音声を用いているか、そして、2. このような効果的な音声の用い方は、発達に伴い習得されるのかを明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は2014年3月までに90日間の野外観察を嵐山ニホンザル群(京都市)を対象に行い、計260時間の行動データを収集した。得られたデータをコーディングし、目的1に関する分析を行った。その結果、ニホンザルは直前に敵対的交渉を行っていた場合には、敵対的交渉の当事者や敵対的交渉に参加していなかった相手に対して、音声を用いる割合が変化していた。つまり、自分や相手の不安状態が音声の用い方に影響する可能性が示唆された。目的2については、アカンボウからオトナまでのメスを対象にした分析を行った。オトナは普段交渉の少ない非血縁メスに接近する際には音声を用いることが多いが、年齢の低いメスでは相手との血縁関係によって音声を用いた割合に違いは見られなかった。つまり、年齢の低いメスは効果的な音声使用を行っているわけではなかった。これらの結果から、ニホンザルの音声使用には、相手の状態に応じた制御や可塑性が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた観察データのほとんどが収集でき、解析を行うことができたため。また、これまでの成果に関する論文も投稿し、現在改稿が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画通りに嵐山集団においてデータを収集する。目的1については音響解析を行い、目的2については、音声行動の個体内での経年変化に関する分析を行う。得られた結果は学会等で発表する予定である。
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Research Products
(5 results)