2014 Fiscal Year Annual Research Report
野生ニホンザル集団におけるコンタクトコールの使い分けとその学習に関する発達研究
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13J03612
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝 野吏子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 社会行動 / ニホンザル / 音声行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのコミュニケーションの進化を探る上で、ヒトと系統的に近い生物種の音声コミュニケーション能力を検討することは有用である。本研究ではニホンザルが親和的な交渉を始める際に用いる音声に着目した。この音声が、1.どのような機能を持っているか、相手との関係や状態に応じて音声をどれほど柔軟に用いているのか、そして、2.このような効果的な音声の用い方は、発達に伴い習得されるのかを明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は嵐山ニホンザル群 (京都市) を対象に野外での観察を行い、182時間の行動データを収集した。得られたデータをコーディングし、目的1の音声の機能に関する検討を行った。その結果、この音声を用いた後には敵対的な交渉を行いにくいことから、この音声は発声者に敵意がないことを相手に示す役割があることが示された。次に、相手の状態に応じて音声を用いているのかを検討した。ニホンザルは親和的な交渉を始める際に、相手が直前に敵対的な交渉を行っていた場合や、普段は関わりの少ない相手である場合に、音声を用いる割合が高くなっていた。つまり、相手にとって自身の行動が予測しにくい場合には、音声を頻繁に用いることを示している。これらの結果から、ニホンザルは音声行動を相手の状態に応じて調整する可能性が示唆された。相手との関係や状態に応じてこの音声を用い、敵意がないことを示すことで、社会交渉を円滑に行い、親和的な社会関係を維持していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた観察データの収集が完了した。また、音声行動の発達に関する研究論文が受理され、音声コミュニケーションのメカニズムに関する研究に関しても現在投稿中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画通りにデータ入力と分析を行う。目的1に関して、相手の状態に応じた音声使用に関する検討を行う。目的2に関して音声行動の発達に及ぼす要因について検討を行う。
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Remarks |
大阪大学人間科学部 比較行動学研究分野HP http://ethology-osaka.tumblr.com
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Research Products
(4 results)