2013 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマス由来化合物の水素化を指向した強い分子表面触媒の創成
Project/Area Number |
13J03646
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 隆志 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルボン酸アミド / 触媒的水素化 / Ru錯体 / 触媒の頑健性の向上 |
Research Abstract |
当研究室で開発した二座配位Ru錯体(RUPCY)を触媒前駆体として用いるカルボン酸アミドの触媒的水素化反応の機構解明を行った。その結果、触媒活性種は触媒前駆体のピリジン部位が脱芳香族化することによって発現することが判明した。また、還元された多くの配位子は中心金属(Ru)から脱離した状態で存在しており、触媒の濃度低下が示唆された。さらに、触媒前駆体を活性化するには水素と塩基(NaOR)を併せて用いる必要があることも突き止めた。 そこで私は、これらの知見を基に新たな触媒前駆体を設計・合成した。RUPCYのもつ二つのピリジル基同士を結合し四座配位子とすることで触媒の頑健性の向上を図った。合成した四座配位Ru錯体の構造は^1H、^<13>C、^<31>PNMRや単結晶X線構造解析で決定された。リン上に様々な置換基をもつ四座配位Ru錯体を合成し、その水素化活性を比較した。その結果、イソプロピル基をもつRu錯体(RUPIP2)が最も高い触媒活性を示すことがわかり、最適触媒前駆体とした。また先に述べた機構解明研究の結果から、触媒前駆体を活性化するために用いる水素と塩基(NaOR)は系中で水素化ナトリウムを誘導しており、それが触媒活性種形成に関わっていると予想した。これを踏まえ、助触媒として水素化ナトリウムを用いることにした。RUPIP2を触媒前駆体として水素化ナトリウムと併せて用いアミドの水素化を試みた結果、触媒活性の激的な向上が確認された。本反応系は、アミドの水素化触媒として世界一の活性をもつといえる。現在、開薬した触媒系を用い、多くの不活性型アミド、バイオマス由来化合物であるペプチド、人工高分子化合物であるナイロンの水素化分解に成功した。またこの改良した触媒系は、RUPCYを用いる系とは異なり、配位子が中心金属から外れることによる触媒の崩壊は観測されず、触媒の頑健性の向上に成功したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究目標として掲げた、分子表面触媒の検証、触媒の構造的頑健性の付与、低反応性化合物の水素化、酸性・塩基性両pH条件下での反応について解決またはその糸口を見出すことに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した水素化触媒を用い、高官能基化されたカルボン酸誘導体の水素化を行い、触媒が失活することなく水素化が収率よく進行することを示す。触媒の頑健性の更なる向上が必要となれば、ホスフィン配位子同士を結合して環状配位子とし、配位能の更なる向上を図る。
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Research Products
(8 results)