2013 Fiscal Year Annual Research Report
牧草共生糸状菌の共生確立に関与する活性酸素生成制御因子の機能解析
Project/Area Number |
13J03668
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榧野 友香 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | エンドファイト / 共生確立機構 / 活性酸素生成酵素 |
Research Abstract |
植物体内で共生的に生活しているEpichloaeエンドファイトはその宿主植物であるイネ科牧草の様々なストレスに対する抵抗性を向上させる。本菌とイネ科牧草の共生には活性酸素生成酵素NoxAを含む活性酸素生成酵素複合体が必須であり、これら因子が協調的に共生時の活性酸素生成を制御していることが示唆されている。この複合体構成因子と相互作用する2種類の低分子量Gタンパク質(RacAおよびCdc42)遺伝子もまた共生確立に必須である。そこで本研究では、活性酸素生成の制御因子の詳細な機能解析により、活性酸素の共生確立における役割を解明することを目的としている。今年度は特に、変異Cdc42及びRacAを用いた機能分化の解析に関して成果を得ることが出来た。RacAとCdc42のキメラ遺伝子を用いた解析により、結合特異性を決定するアミノ酸の特定が完了し、結合能の欠損や結合するタンパク質を置換した低分子量Gタンパク質の作出が可能となった。そして、特定されたアミノ酸領域に変異を導入したタンパク質による各破壊株の相補実験を行い、Cdc42及びRacAの機能活性酸素生成酵素の制御因子との結合を介したものと介さないものがあることを明らかとした。またBiFC法を用いた解析により、活性酸素生成酵素の制御因子と低分子量Gタンパク質の相互作用がおこる菌糸細胞内での部位が明らかとなった。宿主植物の細胞間隙皆伸長し、宿主植物と同調した菌糸成長を行うEpichloaeエンドファイトにおいて、racA破壊株では菌糸の過剰な成育により宿主植物の矮化が引き起こされる。一方で、cdc42破壊株では宿主植物体内における菌糸の断片化が観察された。さらにNox複合体構成因子破壊株の植物内での菌糸形態を比較するために、これら構成因子破壊株においてGFPを過剰発現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、RacAとCdc42のキメラ遺伝子を用いた解析により、結合特異性を決定するアミノ酸の特定が完了した。この結果をもとに結合能が変化した低分子量Gタンパク質の作出が可能となり、Cdc42及びRacAの共生や細胞融合の制御における役割を解明が進展した。またBiFC法を用いた解析により、Nox制御因子と低分子量Gタンパク質の菌糸細胞内での相互作用部位が明らかとなった。さらにCdc24の低分子量Gタンパク質の活性化因子(GEF)としての機能を調べるための実験系も整いつつある。以上のように、本年度は今後の研究の発展につながる成果をあげており、期待通りに研究が進展したと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
糸状菌でcde24遺伝子破壊株の単離例がなく、Cdc24は菌糸生育に極めて重要な因子であると推定される。本研究でも、cdc24遺伝子破壊株および発現抑制株の作出を試みたがいずれの株も得られていないことから、cdc42の欠損は致死である可能性が高いと考えられた。そこでCdc24がCdc42およびRacAのGEFとしての酵素活性を持つか否かを解析するため、大腸菌を用いてこれらタンパク質の発現を行い、酵素活性の測定を行なう予定である。またRoxA破壊株と類似した共生異常や菌糸融合能の欠損を示す変異株としてgpaA破壊株、so破壊株、nsjA破壊株などが単離されている。そこで、これら因子の菌糸細胞内での局在がNoxAによって生成される活性酸素の影響を受けるか否かの解析を行うため、これら因子とGFPの融合タンパク質を発現する菌株の作出を行なった。今後、それら菌株のnoxA遺伝子の破壊株を作出し、その影響を明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)