2013 Fiscal Year Annual Research Report
オーロラアーク近傍における風速変動駆動メカニズムの解明
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13J03733
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 透 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 極域超高層大気 / ナトリウムライダー / EISCATレーダー / 電離圏-熱圏結合 / オーロラ / スポラディックナトリウム層 / 極域電離圏 / 熱圏 |
Research Abstract |
極域中間圏・下部熱圏は、磁気圏からのオーロラ粒子降下やオーロラ電流等の形での太陽風電磁エネルギーの注入と、下層大気とのプラネタリー波、大気潮汐波、大気重力波などの中性大気波動を介した力学的なエネルギー輸送がともに存在するといった開放された複雑系である。スポラディックナトリウム層はスポラディックE層中の荷電粒子と中性粒子との化学変化、電場、荷電粒子やオーロラ降下粒子によって生成されることが報告されており、スポラディックナトリウム層生成・維持のメカニズムを理解することは電離圏-熱圏結合を理解する上で重要である。 トロムソナトリウムライダーは極域中間圏・下部熱圏の温度、風速を時間、高度分解能良く観測することができることに加え、EISCATレーダーと同サイトに設置されており、極域中間圏・下部熱圏観測は本研究課題遂行に有効である。 平成25年度は95日間ノルウェー・トロムソに滞在し、ナトリウムライダーの観測およびライダーシステムの改善に従事した。システム改善としてナトリウムライダーの絶対波長校正ユニットの再構築を行った。観測では約1094時間レーザーを稼働させ、約485時間分の温度、風速データを得た。 スポラディックナトリウム層内の温度を導出するためには既存の解析プログラムをより高時間分解能に改良する必要があった。そこで新しく高時間分解能の温度、ナトリウム密度を導出できる解析プログラムの開発を行った。改良された解析プログラムは元来のプログラムと比較して約5倍の分解能向上を実現した。このプログラムを2012年1月22日のスポラディックナトリウム層のイベントに適用し、本イベントの生成原因を調査した。その結果、スポラディックナトリウム層は温度変動ではなく、スポラディックE層とオーロラによって生成されたナトリウムイオンが電場によって集積された効果が重なりあって生成された可能性が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナトリウムライダーによって一定の観測データを取得できたこと、高時間分解能解析プログラムの開発が順調に進行しているため、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はEISCATレーダーの電場データから荷電粒子の鉛直速度成分を計算し、電場による荷電粒子の集積量を計算するする。また、同レーダーの電子密度データからスポラディックE層中のナトリウムイオンの数密度を推定し、2012年1月22日のスポラディックナトリウム層のイベントがどの物理機構がどの程度の割合で生成に寄与していたのかを定量的に明らかにすることを目標にする。また、これまでの研究では1イベントのみに絞って解析を行ってきたが、ナトリウムライダーの3シーズン分のデータからスポラディックナトリウム層が出現している日を抽出し、生成機構の統計解析も行う予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Variations of the neutral temperature and sodium density between 80 and 107 km above Tromso during the winter of 2010-2011 by a new solid-state sodium lidar2014
Author(s)
Nozawa, S., T. D. Kawahara, N. Saito, C. M. Hall, T. T. Tsuda, T. Kawabata, S. Wada, A. Brekke, T. Takahashi, H. Fujivvara, Y. Ogawa, and R. Fujii
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Journal Title
Journal of Geophysical Research
Volume: VOL.119
Pages: 441-451
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Decrease in sodium density observed during auroral particle precipitation over Tromso, Norway2013
Author(s)
Tsuda, T. T., S. Nozawa, T. D. Kawahara, T. Kawabata, N. Saito, S. Wada, Y. Ogawa, S. Oyama, C. M. Hall, M. Tsutsumi, M. K. Ejiri, S. Suzuki, T. Takahashi, and T. Nakamura
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Journal Title
Geophysical Research Letters
Volume: VOL.40
Pages: 4486-4490
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] トロムソ上空でオーロラ擾乱時に観測されたスポラディックナトリウム層の生成・維持機構の解明2014
Author(s)
高橋透, 野澤悟徳, 津田卓雄, 大山伸一郎, 藤原均, 堤雅雅基, 川原琢也, 斎藤徳人, 和田智之, 川端哲也, 松浦延夫, Chris Hall
Organizer
IUGONET研究集会
Place of Presentation
名古屋大学
Year and Date
20140313-14
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[Presentation] Variations of the neutral temperature inside an SSL during a night of high auroral activity above Tromso2013
Author(s)
T. Takahashi, S. Nozawa, T. T. Tsuda, S. Oyama, H. Fujiwara, M. Tsutsumi, T. D. Kawallara, N. Saito, S. Wada, T. Kawabata, and C. Hall
Organizer
AGU FALL MEETING
Place of Presentation
サンフランシスコ
Year and Date
20131209-13
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[Presentation] トロムソ上空で地磁気擾乱時に観測されたスポラディックナトリウム層内外の大気温度変動2013
Author(s)
高橋透, 野澤悟徳, 津田卓雄, 大山伸一郎, 藤原均, 堤雅雅基, 川原琢也, 斎藤徳人, 和田智之, 川端哲也, 松浦延夫
Organizer
地球電磁気・地球惑星圏学会
Place of Presentation
高知大学
Year and Date
20131102-05
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[Presentation] トロムソ上空で地磁気擾乱時に観測されたスポラディックナトリウム層内外の大気温度変動2013
Author(s)
高橋透, 野澤悟徳, 津田卓雄, 大山伸一郎, 藤原均, 堤雅雅基, 川原琢也, 斎藤徳人, 和田智之, 川端哲也, 松浦延夫
Organizer
MTI研究集会
Place of Presentation
情報通信研究機構(東京都小金井市)
Year and Date
20130916-17
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[Presentation] EISCATトロムソサイトにおけるNa共鳴散乱ライダーとEISCATレーダーの連携観測2013
Author(s)
津田卓雄, 野澤悟徳, 松浦延夫, 堤雅基, 小川泰信, 高橋透, 川原琢也, 川端哲也, 斎藤徳人, 和田智之, 中村卓司, 藤井良一
Organizer
日本地球惑星科学連合2013年大会
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)
Year and Date
20130519-24
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[Presentation] トロムソナトリウムライダーの2012年度観測概要2013
Author(s)
野澤悟徳, 川原琢也, 斎藤徳人, 津田卓雄, 川端哲也, 堤雅基, 大山伸一郎, 高橋透, 藤原均, 和田智之, 小川泰信, 藤井良一
Organizer
日本地球惑星科学連合2013年大会
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)
Year and Date
20130519-24