2013 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制タンパク質p53の高特異的・高効率な一過性ペプチド阻害剤の開発
Project/Area Number |
13J03734
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 隼弥 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 癌抑制タンパク質 p53 / 人工多能性幹細胞 / 一過性阻害 / ヘテロ四量体形成 |
Research Abstract |
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、体細胞に多能性誘導因子を導入することで初期化された細胞であり、再生医療をはじめとした数多くの応用が期待されている。しかしながら遺伝子導入および発現による癌抑制タンパク質p53を中心としたp53-p21シグナル経路の活性化が、体細胞の初期化の効率を低下させている主要な原因の一つとなっている。このため、p53機能を一過的かつ効果的に阻害することは、iPS細胞の医療への実用化を達成する上で、重要な働きを担うことが考えられる。 本研究では、『iPS細胞研究への応用を目指したペプチドによる一過性p53活性阻害手法の開発』を目的とし、フラグメント縮合法を用いた効率的なペプチド化学合成により、細胞導入や分解能を最適化された機能化配列を有する阻害ペプチドを作製する。 本年度は、阻害ペプチド内の機能化配列の最適化を実施する上で必要な多様な長鎖ペプチドの効率的な合成系の確立およびモデルとなる長鎖ペプチドの合成を実施した。複数のペプチドをフラグメントとして一つの長鎖ペプチドへと繋ぎ合わせるフラグメント縮合法は、多様な種類の長鎖ペプチド合成するために必要不可欠である。東海大学の北條裕信研究室において、フラグメント縮合法に必要なアミノ酸誘導体の合成法を修得し、必要な誘導体を合成した。合成したアミノ酸誘導体を用いて、各種フラグメシトを合成した後に、複数の機能化配列を組み合わせた阻害ペプチドを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、東海大学の北條裕信研究室においてフラグメント縮合法を修得した。本手法は、多様な配列を有する長鎖ペプチドを効率的に合成するために必要不可欠な手法であり、これにより阻害ペプチドの一次配列の最適化を行うための基盤が整ったといえる。このことから、実施計画に記載した通りに本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の初期化(リプログラミング)に関する研究分野は、急速に進展しており、さまざまな細胞初期化手法の開発や効率の向上が報告されている。そのため、本阻害手法においても体細胞の初期化効率に与える影響を直接的に解析することも視野に入れる必要がある。さらに、応用が期待される他の研究領域である癌治療や基礎研究への利用も見据えて、ペプチド配列の最適化の際に使用するペプチド配列を検討していく必要があると考えられる。
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Research Products
(9 results)