2014 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制タンパク質p53の高特異的・高効率な一過性ペプチド阻害剤の開発
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13J03734
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 隼弥 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌抑制タンパク質p53 / 翻訳後修飾 / 四量体形成 / 細胞内局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、『癌抑制タンパク質p53の高特異的・高効率な一過性ペプチド阻害剤の開発』と題して、フラグメント縮合法を用いた効率的なペプチド化学合成により、細胞導入や分解能を最適化された機能化配列を有する阻害ペプチドを作製することを目的とする。昨年度から引き続き、ペプチド配列の最適化を実施している際に、四量体形成ドメイン部分のヘテロ四量体形成能の改善のため、メチル化アルギニンアナローグを用いることを考案した。翻訳語修飾として報告されていたアルギニン残基のメチル化は当初、四量体構造を安定化する効果を有することが期待されたが、メチル化アナローグのCDスペクトルによる熱変性解析を実施したところ、予想に反して四量体構造の熱力学的安定性は低下した。
そこで本年度は、『p53四量体形成ドメイン中のアルギニン残基メチル化によるp53機能制御機構の解明』と題して新たに研究に着手した。四量体形成ドメイン内の333, 335および337位のアルギニン残基側鎖が複数メチル化された10種類のメチル化ペプチドアナローグを化学合成し、CDスペクトルおよび熱変性測定を実施した。その結果、全てのメチル化ペプチドアナローグは非メチル化ペプチドと比較して、四量体構造が不安定化していることが明らかとなった。特に337位のジメチル化が不安定化に与える寄与は大きく、その理由として337位のアルギニンと352位のアスパラギン酸の静電的な結合がメチル化によって阻害されることが示唆された。さらに複数のメチル化部位が修飾されるメカニズムを明らかにするために、in vitro methylation assay を実施し、nLC-MSMSを用いてメチル化部位の解析を行った。その結果、3箇所のアルギニン残基のうち333および335位が第一番目にメチル化され、その後337位がメチル化されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、p53四量体形成ドメインのメチル化による多量体構造の不安定化を明らかにした。これまでに、数多くのp53翻訳後修飾が報告されているが、翻訳後修飾により多量体構造が不安定化する例はこれまでになく、今年度の研究成果は非常に興味深いものである。またこの結果を受けて、メチル化による不安定化を介したp53の細胞内局在に関する新規制御モデルを構築することができた。このことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果として明らかとなった、p53のメチル化翻訳後修飾による多量体構造の不安定化は、これまでの研究において数多く報告されている、直接的にp53機能を活性化させる翻訳後修飾とは異なる特異的な修飾である。そのため、メチル化の細胞内機能における役割を説明することは簡単ではない。そのため、今後はメチル化による不安定化機構の解明とメチル化を受けたp53の細胞内挙動の解析を並行して実施し、複合的に研究を推進していく必要があると考える。
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Research Products
(4 results)