2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03750
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 純治 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ディラック電子 / 強磁性体 / 理論研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は, ディラック方程式に基づく強磁性体(以下, ディラック強磁性体)におけるスピントロニクス現象の系統的解明である. まずディラック強磁性体の磁気輸送, 具体的には異方性磁気抵抗効果(AMR)と異常ホール効果(AHE)とを線形応答理論に沿ってグリーン関数法を用いて調べた. ディラック強磁性体には2種類の強磁性の秩序変数(以下, '磁化', 'スピン')があるが, 申請以前から調べていた磁気輸送係数は特別な3つのパラメター領域―(i)'磁化'のみ, (ii)'スピン'のみ, (iii)'磁化'と'スピン'とが平行でかつ同じ大きさ―のみに限られていた. しかし, 実は一般のパラメター領域で計算できることが判明したため, 改めて調べることとなった. これにより, AMRを決定する2つの因子, フェルミ面の変形による異方性と不純物による減衰定数の異方性への依存性が定量的に明らかとなった. AHEに関しての発見は, 'スピン'が有限の場合には, 化学ポテンシャルがバンドギャップ中にある場合においても, 量子化されていないAHEが生じることを解析的に導いたことである. 次に, 上記の輸送係数において, 不純物の効果を自己エネルギーとしてのみならずバーテクス補正としても取り入れた. バーテクス補正の効果は定量的にはもちろんのこと, ゲージ不変性を満たすという定性的にも重要な意味を持つ. AHEに関する先行研究からも示唆されていた, AHEには特に重要な寄与をすると考えられるサイド・ジャンプとスキュー散乱の寄与をバーテクス補正として取り入れたが, この取り扱いは統一的に行うことが可能であると分かり, 次年度の研究実施計画における電流によるスピントルクと, その逆過程であるスピン起電力の研究に対しても適用できる. これは本研究を進める上で重要な成果である. 他にも電子と磁化ダイナミクスにおいて重要となるギルバート減衰定数を線形応答理論に沿ってグリーン関数法を用い, 秩序変数が熱平衡状態から微小振幅で運動しているとして求めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラック強磁性体における相関関数に対する統一的な計算手法を, バーテクス補正も含め, 確立したことが, 非常に有利に働いたため, 現在の課題である熱平衡での秩序変数さえ明らかになれば, 交付申請書に記載した研究の目的は, ほとんど達成される.
|
Strategy for Future Research Activity |
熱平衡での秩序変数を決定することが第一の課題である. 現在まで化学ポテンシャル一定の条件のもとで平均場の自己無撞着方程式を解こうと試みていた. そこで現れる波数積分には紫外発散が含まれており, その発散を取り除くためにカットオフを導入したが, その場合どうしても方程式の解がそのカットオフに強く依存してしまうという問題があった. そこで粒子数が一定となる条件を課すことで, その強いカットオフ依存性を和らげることができるのではないかと考えている. その課題が解決すれば, 11.にて上述の通り, 本研究の目的は達成されると考えられる.
|
Research Products
(4 results)