2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内動態を制御した効率的なB型肝炎ウイルス由来薬剤送達ナノキャリアの開発
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13J03835
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽宮 正晴 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / B型肝炎ウイルス / 細胞内動態 / siRNA |
Research Abstract |
平成25年度においては、B型肝炎表面抗原タンパク質ナノ粒子バイオナノカプセル(以下、BNC)とリポソーム(以下、LP)との複合体のヒト肝臓細胞内への侵入機構また細胞内の動態の解析を、共焦点顕微鏡での観察によって行った。BNC、LPをそれぞれ蛍光標識し、更にLP内に蛍光ビーズを封入する事で、①キャリア自体、と②送達される薬物、の各成分の、細胞表面・細胞内での動態を蛍光顕微鏡によって観察可能とした。これら蛍光標識したBNCと蛍光ビーズを含むリポソームとを融合させた後、ヒト肝臓細胞株の培養培地に添加し、細胞内における複合体の各成分の量・局在を解析した。その結果、BNC-LP複合体はB型肝炎ウイルス(HBV)と同様、まずヒト肝臓細胞表面に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合した後、より親和性の高い受容体へと移行した後に細胞内へ侵入するという機構を有している事が示唆された。また、BNCとリポソームは細胞膜上で解離し、特にリポソーム成分は細胞膜と融合、もしくはエンドサイトーシスによって、細胞内へ取り込まれている事が確認され、BNC-LP複合体がその内包物をヒト肝臓細胞特異的に細胞内へ送達し、更にその大部分が分解経路であるエンドソーム/ライソソームを回避して細胞質へ直接送達されている事が明らかとなった。また、BNC-LP複合体の細胞内動態と並行して、BNCを用いた核酸医薬品への応用の検討を進めている。現在、ある特定の脂質を用いた作製条件において、中性・アニオン性LPへ非常に効率的に核酸を封入する事に成功している。また、標的とする遺伝子を特異的に抑制する事の出来る核酸であるsiRNAを上記LPへ封入させ、BNCと融合させることで、ヒト肝臓細胞特異的な遺伝子抑制効果を得る事にも成功した。これらの成果は、核酸医薬を実用化させるために非常に有用な技術となり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた細胞内の動態解析においては、細胞内への侵入機構や細胞内局在などを明らかにしており、平成25年度の目標を概ね達成していると言える。また、siRNAの効率的な封入法やその効果の確認など、新たな技術の開発も順調に進展しており、十分な達成度であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施した蛍光顕微鏡による細胞内動態解析では、得られる分解能に限界がある(蛍光顕微鏡の分解能は数百nm)ため、更に詳細な細胞内局在を明らかにするためにも、電子顕微鏡を用いる解析に着手する。蛍光ビーズの代わりにLP内へ金コロイドを封入し、細胞内の金コロイドのシグナルを電子顕微鏡によって観察する事で、数nmの分解能で細胞内局在を明らかにすることが可能となる。 また、siRNA送達においては、効果が確認されたin vitroレベルだけでなく、マウスなどに投与してin vivoにおけるsiRNAの遺伝子抑制効果を確認する。
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Research Products
(5 results)