Research Abstract |
本研究では高性能低公害固体推進薬開発に向け, アンモニウムジニトラミド(ADN)系推進薬に着目した。ADN系推進薬を世界に先駆け実用化するとともに新規高エネルギー物質開発に資する知見を得ることを目的とし, 本年度はADN単体の基礎物性および熱分解機構について以下の項目を検討した。 まずは基礎的な物性を測定した。ADNについて分光装置, 熱分析装置, 走査型顕微鏡など各種装置による分析により, 化学構造, 転移温度, 分解開始温度, 粒径, 粒形といった物性を把握した。 ADNの熱分解機構を実験的に検討するため, ADNを定速昇温し, 熱挙動と生成ガス, 凝縮相の生成物の同時測定を行い, 発熱量や分解機構を解析した。ADNは融解後, 多段階で熱分解が進行し, 温度により分解機構が変化することが示された。さらにADNの分解挙動および凝縮相生成物の生成挙動の定量に成功した。以上の結果を組み合わせ, ADNの熱分解機構を推定した。 また, 分解機構に関する詳細な知見を得るためには, 様々な条件のもと測定を行い, 基準となる条件と比較, 検討することが有効である。本研究ではこれまで研究例が少ない加圧条件で昇温した際の熱分解挙動について検討した。加圧条件における熱挙動, 生成ガス, 凝縮相の組成変化, 分解の様子の目視観察を行った。分解初期に進行する発熱反応が観測できた。これをさらに解析することにより, 分解速度の解析や安定剤の開発にもつながる。 ADNの主分解生成物である硝酸アンモニウム(AN)の特性を把握することは重要である。本年度はANの混合特性に着目し, 混合物の物性がANの安定性に与える影響について検討した。有機物, 無機物の混合時, 錯体形成時の安定性の変化を観測した。 これらの成果は投稿論文や国内外の研究発表会にて発表した。また, 学会の部会や学会公認の研究会等にも積極的に参加し国内外の著名研究者との知己を得て, 広く学外とも接点を持って幅広い視点で研究を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のうち, ADNの基礎物性, 熱分解機構の解析は計画以上の成果を得ることができた。計画を上回る国際会議7件, 国内学会7件で発表することができ, 論文も3件掲載決定した。経時変化の因子の洗い出しについては因子の洗い出しを行っており, 測定の準備を行うことができた。
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