2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03913
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八木 亜樹子 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機化学 / カーボンナノリング / カーボンナノチューブ / グラフェンナノリボン / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)は、現在非常に注目されている次世代炭素材料である。1991年に飯島によって発見されてから世界中で研究が進められている一方で、異なる構造をもつCNTを分離・精製する手法や、構造を完全に制御した合成法は未だに確立されていない。望みの構造をもつCNTを1つの分子として精密化学合成することができれば、CNTの分子科学的な理解が可能となるだけでなく、炭素材料としての機械的・電気的特性の向上も期待できるだろう。そこで本研究では、『短いCNT』であるカーボンナノベルトの精密有機合成を行う。カーボンナノベルトの筒状構造はCNTの機械的・電子的性質を創る根幹の要素であるため、カーボンナノベルトは短いながらもCNTの性質を示す可能性を秘めている。従って、CNTの分子レベルでの性質評価や応用に着手でき、ナノカーボン科学の進展に大きく寄与するだけでなく、有機合成化学におけるブレイクスルーとなることは疑いない。 今年度はアームチェア型カーボンナノベルトの合成を目指した。まず、その合成前駆体の一つであるシクロパラフェニレンピレニレン(CPPyr)を新たに合成した。CPPyrは世界初のピレンを含むカーボンナノリングである。CPPyrの性質を調査し、ピレンを組み込んだことによりCPPの性質にピレンの性質が付与されることがわかった。CPPyrの官能基化を経由したカーボンナノベルトの合成については、現在検討中である。次に、カーボンナノベルトの合成前駆体のひとつであり、以前合成したシクロナフチレンの合成法の改良に取り組み、その大量供給を行った。さらに、それを用いてカーボンナノベルトへの変換を試みた。未だカーボンナノベルトは得られていないが、条件検討によってシクロナフチレンの一部が縮環されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のシクロヘキサンを用いたカーボンナノリング合成を応用し、世界初のピレンを含むカーボンナノリング合成に成功した。また、その性質を詳細に評価した。未だカーボンナノベルトには変換できていないが、条件検討によって様々な有力な知見が得られている。このことから申請者の今年の研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成したシクロナフチレンやシクロパラフェニレンピレニレンを用いたカーボンナノベルト合成を行う。具体的には現在見出しつつある、縮環が進行する反応条件の最適化を行う。合成したカーボンナノベルトの性質評価にも積極的に取り組む。
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Research Products
(2 results)