2014 Fiscal Year Annual Research Report
芳香環連結反応を鍵としたペプチド抗生物質の効率的合成法の確立
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13J03924
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
天池 一真 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 全合成 / C-H結合直接変換 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
チオペプチド抗生物質はグラム陽性菌のタンパク質合成阻害剤候補でありその生物・薬理活性が現在急速に注目を集めている。構造的特徴としてはアゾール環(チアゾール、オキサゾール)を置換基とした多置換ピリジンを含む大環状ペプチド構造を有しており、誘導体は50種類以上存在する極めてユニークな化合物群である。このような背景の中、チオペプチド抗生物質の合成は多くの化学者の研究対象となっており、現在まで複数の研究グループによって合成が報告されている。これらの合成において鍵となる多置換ピリジン骨格は、付加環化反応によるピリジン合成や有機金属化合物と有機ハロゲン化物のクロスカップリング反応によって構築するものが報告されている。しかしながらいずれの合成法においても前駆体の調製に多段階を必要とするため、より直接的な骨格構築法が望まれている。 本研究の目的は、チオペプチド抗生物質群の効率的かつ柔軟な一般的合成法の確立である。昨年度は主骨格である多置換ピリジンの迅速構築法を報告している。本手法は当研究室で開発された芳香環直接連結反応とDiels-Alder反応を鍵反応としており、今回はDiels-Alder反応に焦点を絞って研究をおこなった。種々条件検討後、基質適用範囲の調査をおこなったところ、計10種類以上のトリアリールピリジンの合成に成功した。さらに本手法を用いてチオペプチド抗生物質の主骨格であるトリチアゾリルピリジンの合成に着手した。前年度報告した際は低収率であったものの、条件検討の結果、中程度の収率で目的のトリチアゾリルピリジンを得た。得られたトリチアゾリルピリジンから数段階経ることにより、6種類のチオペプチド抗生物質の形式全合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度見出した多アリール化ピリジンの迅速構築法を詳細な検討を行うことで10種類以上のトリアリールピリジンの合成に成功している。また本手法を用いて6種類のチオペプチド抗生物質の形式全合成を達成した。以上のように目的であるペプチド抗生物質の網羅的合成法の確立に大きく近づいたことから、今年度の研究進歩状況は期待以上のものであったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
見出したチオペプチド抗生物質の統一的合成法は未だ一般性に欠けている。より広範な種類のチオペプチド抗生物質を合成するために、主骨格である多置換ピリジンの新たな合成法の確立を目指す。そして従来法では達成不可能であったチオペプチド抗生物質の全合成に着手する予定である。
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Research Products
(4 results)