2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J04026
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Research Institution | Ueno Gakuen University |
Principal Investigator |
猪瀬 千尋 上野学園大学, 日本音楽史研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽 / 雅楽 / 狂言綺語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は音楽における思想面に注目し、考察を行った。 報告者は音楽・音声の「空間」に注目してきた。ここでいう「空間」とは①音楽が実際に発せられた「場」そのものと、②その「場」を構成する諸要素を統合したものである。①の分析について、特に先例主義を規範とする宮廷儀礼においては、公家日記にその空間配置が詳細に記されている。文字史料からでも儀礼の場はおよそ復元可能なものが多いことから、主として記録史料の解読による儀礼の図示化を中心とするものである。②の分析については、「場」をとりまく様々な要素を明確にするものである。具体的には、演奏の時間帯、演奏者の人数、演奏場所(屋内か屋外か、寺社か宮中か)、見物人の有無(民衆とのかかわり)、その規模、背後にある思想、どのような記録によってそれが残されたか、などである。これら音楽を構成する様々な空間的要素を分析した上でそれらを統合し、これを①で行った実際の場と結合させることで、音楽が奏されていたその時代の「空間」を復元することが、本研究の目的である。2014年度は特に、②の点に注目し、音楽・音声についての思想面についての考察を行った。前年度の研究で、仏教と音楽についての研究を行った結果、狂言綺語観の理解が重要であるとの結論に至ったため、さらなる研究調査を行い、これを『国語と国文学』『名古屋大学国語国文学』誌上に報告した。また「宿執」という観念が、中世の楽家の道の理念と重なる点について、日本文学協会研究発表大会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、学会発表をふくむこれまでの研究成果の蓄積に対し、論文投稿などの具体的な成果報告を出せない状況が続いた。また、その上で研究を広げすぎてしまったため、それぞれの問題が連関をつけられないままの状況であったといえる。 またこれまでの学会発表や論文を振り返っても、複数の問題を未消化のまま詰め込みすぎてしまい、そのために結論にいたるまで、言葉足らずになってしまうことが間々あることがわかった。 最終年度において、一定の形で成果報告を出すためにも、これまでの論文を見直し、幾つか改定が必要であると考える。 一方、調査については、持明院家に関わる楽書群の発見など、幾つかの有益な点があり、今後の調査継続を通してより充実なものにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究状況をふまえ、研究の遅滞を取り戻し、より滞りなく研究を遂行させるためには、新たな環境に身を置くことが必要であると考え、2015年度からは史料編纂所に所属を変更した。 史料編纂所においては、幅広い資料に触れることができ、また存分に研究できる環境が約束されており、如上の研究の遅滞についても、挽回することが可能であると考える。 書陵部や内閣文庫など、音楽関係についての資料を豊富に有する文庫、機関での調査を継続して行い、また史料編纂所で日常的に調査を行うことによって、これまで行ってきた研究についての反省、見直しを行い、具体的な形で研究成果として提出できるよう、邁進したい。
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Research Products
(3 results)