2013 Fiscal Year Annual Research Report
両生類におけるアクアポリンの生理学的役割、遺伝子発現調節機構、および進化プロセス
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13J04065
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
柴田 侑毅 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アクアポリン / 皮膚腺 / ネッタイツメガエル / ニシブチイモリ / アルギニンバソトシン |
Research Abstract |
本研究の成果により、ネッタイツメガエルが1)体内の浸透圧を上昇させ, 2)下腹部皮膚に発現するAQP-xt3をして水を吸収し, 3)腎臓合菅にAQP-xt2, 膀胱にAQP-xt5aおよびAQP-xt2をさせて水を再吸収することで, 水流出を防ぐ、というモデルを提唱した。本研究は水の乏しい環境下での水棲種の水バランス維持機構を, AQPの観点から示した初めての知見であり, このうちAQP-xt5aに関する論文が学術雑誌に受理された。 フルオレセイン標識したAVTを用いて、ニホンアマガエル下腹部皮膚の水透過能を測定したところ、6番目のProをLys (F)に置換したAVTにおいて水透過能が見られた。この皮膚の凍結切片を作製し、蛍光を観察したが、明瞭なシグナルが得られなかった。今後より条件を検討する必要がある。 有尾目のニシブチイモリを用いて、AQPa2パラログのcDNAクローニングを行った。現在までに2種類のAQPa2(腹側皮膚型および膀胱型)とAQP5の全長配列を決定することに成功した。この結果は、有尾目において初めてAVT調節性AQPの同定に功したことを意味し、同時に両生類の進化を考察するうえで、非常に重要な知見となりうる。RT-PCRの結果、腹側皮膚型AQPa2は大腿部皮膚、胸部皮膚、腹側部皮膚および背側皮膚に発現し、AQP5は膀胱特異的に発現することを発見した。さらに腹側皮膚型AQPa2およびAQP5のcRNAを合成し、アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた水透過試験を行い、どちらのAQPも水透過性を有することを証明した。また、腹側皮膚型AQPa2に特異的な抗体を作製し、免疫組織化学的解析を行ったところ、腹側皮膚の最外顆粒細胞の細胞質中にて免疫陽性シグナルが得られた。また、Rehydration実験を行ったところ、腹側皮膚型AQPa2の免疫陽性シグナルは同細胞のアピカル側細胞膜に移動していることを示した。この結果は、有尾目においても腹側皮膚から水を吸収するという無尾目と同様の機構で、体内の水バランスを維持することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有尾目のアクアポリンについて、AQPa2 (AQP-nv2, AQP-nv3), AQP5のクローニングが進んでおり、おおむね目標を達していると判断する。一方、AVT受容体の可視化実験は、未だ条件検討の段階であり、全体を通して「②おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ネッタイツメガエルの膀胱型AQPと腹側皮膚型AQPについて論文にまとめ、主要学術雑誌に論文を投稿する。 AVT受容体の可視化実験に関して、AVTを作用させる条件(AVTの濃度など)、凍結組織切片の洗浄時間などを検討する。有尾目のAQPに関して, 今年の夏に共同研究者である米ネバダ大学のHillyard教授の研究室を訪問し、有尾両生類の水バランス維持に関するより詳細な解析を行い、主要学術雑誌に論文を投稿する予定である。
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Research Products
(5 results)