2013 Fiscal Year Annual Research Report
コレラ菌の鉄代謝機構の解明とその阻害による創薬への応用
Project/Area Number |
13J04076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関根 由可里 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘム蛋白質 / ヘム分解酵素 / 反応機構 / 反応中間体 / 酸素活性化 / 共鳴ラマン / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、コレラの新たな創薬ターゲットとなりうる、コレラ菌の生存および増殖に必須である鉄代謝系に着目し、鉄ポルフィリン錯体であるヘムから鉄を取り出すHutZという蛋白質の構造およびヘム分解機構の解明を目指している。これまでの研究から、HutZはヘムを最終分解産物であるビリベルジンと鉄に分解することが明らかとなってきたが、その分子機構およびHutZの構造は不明であった。そこで本年度ではHutZによるヘム分解中間体の補足とX線結晶構造解析によるHutZの構造決定を目標としてきた。 HutZによるヘム分解反応はまずヘム鉄が還元され、酸素分子がヘム鉄に結合し、この酸素分子が活性化されることで進行されると考えられている。そこで、ヘム分解反応における初期の中間体であるHutZの酸素結合体を、共鳴ラマン分光により補足を試みた。しかし、嫌気条件下で還元型のヘムを保持したHutZに酸素分子を結合させると、ヘム鉄の自動酸化により5秒以内で酸化型のヘムへ戻ってしまい、HutZの酸素結合体は著しく不安定であることが判明した。そこで高時間分解装置である連続フロー共鳴ラマン分光装置を用い、酸素結合体の補足を行ったところ、酸素混合時間が300ミリ秒において酸素結合体が観測できた。この中間体における酸素分子周辺の構造は他のヘム分解酵素と類似していたが、ヘム鉄の自動酸化速度が著しく速いことから、HutZによるヘム分解反応は酸素分子の結合および自動酸化により、負の制御をしていることが考えられた。また、HutZのX線結晶構造解析に向け、結晶化を試みたところ、測定に耐えうる結晶の作製はできたものの、十分な分解能が得られず、良質な結晶を作製する必要があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素体のHutZは自動酸化速度が著しく速いことから、ラマンスペクトルの観測は困難であると考えられていたものの、連続フローラマン分光装置を用いることでその問題を解決することができた。結晶化に関しては、今後より良質な結晶が得られることで、HutZの構造決定を行うことが可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
HutZのヘム分解反応中間体は、本年度観測できた酸素体の他にヒドロキシ体が存在する。このヒドロキシ体の同定を行うために、既に他のヘム分解酵素のヒドロキシ体補足に利用されているEPRを用い、 HutZによるヘム分解反応における分子機構を明らかにしていく。さらに、コレラ菌体内では、HutZにヘム分解反応を行う際に必要な電子を受け渡す還元酵素が存在することが考えられている。境に、コレラ菌の全ゲノムは明らかになっていることから、還元酵素を探索し、生体内でのヘム分解機構の解明を目指す。
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Research Products
(5 results)