2014 Fiscal Year Annual Research Report
コレラ菌の鉄代謝機構の解明とその阻害による創薬への応用
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13J04076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関根 由可里 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘム分解酵素 / ヘム輸送体 / 紫外可視吸収分光法 / ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの変異導入による研究から、コレラ菌由来のHutZはヘム分解活性を保持しており、その活性は活性中心であるヘム周辺に存在している水素結合の形成および切断により調整されていることが明らかとなった。以上のことから、コレラ菌体内においてHutZの活性を調節するために、HutZと相互作用しヘム周辺の構造変化を誘起させる分子の存在が示唆された。しかし、これまでHutZと相互作用する分子や蛋白質の同定はなされていない。 そこで遺伝子解析より、HutZとオペロンを形成しているHutXに着目し、発現および精製系を確立させた。HutXはHutZへのヘム輸送体と予想されていたため、まずヘムの結合当量数および親和性をヘム滴定により決定した。その結果、ヘムの結合当量数は2、ヘムの解離定数Kdは0.023 ± 0.01 uMであった。この値はHutXと相同性があり、ヘム輸送蛋白質と想定されている大腸菌O157:H7株由来のChuXの1.99 ± 0.02 uM、さらにHutXからヘムを受け取ると予測されるHutZの0.052 ± 0.02 uMと比較し低い。つまり、HutXのヘム親和性はヘムを受け渡すHutZより高いことが明らかとなった。そこで、HutXからHutZへヘムが輸送されるかを検討するため、ヘムを結合させたHutX(heme-HutX)とHutZを混合させ、吸収スペクトルの追跡を行った。その結果、混合30秒後のSoret帯の極大吸収が、HutZのヘム結合体(heme-HutZ)に由来する411nmであることから、30秒以内にHutXからHutZへ、ヘム輸送が行われたことが明らかとなった。 以上のことから、これまで発見されていなかった、HutZへのヘム輸送体がHutXであることが示唆され、HutXによりHutZのヘム周辺構造変化が誘起される可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究により、コレラ菌由来ヘム分解酵素HutZの構造や活性調節機構を明らかにしていたが、コレラ菌体内において、どのような分子もしくは蛋白質がHutZの活性を制御しているかは不明であった。本年度、機能を明らかにしつつあるHutXは発現・精製系を模索していた当初、多量体化してしまい分子論的な実験および解析は困難なように感じた。しかし、試行錯誤していく中で、精製系を確立させ、二量体のHutXを分取することが出来た。これまで研究してきたHutZとの相互作用や構造など、未だに明らかにされていない部分もあるが、HutXからHutZへのヘム輸送が確認されたことから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からHutXがHutZへのヘム輸送体であることが明らかとなったことから、今後はHutZとHutXの相互作用様式を明らかにしていく。そのため、等温滴定型熱量測定(ITC)により、相互作用による熱力学的パラメータの観測を行う予定である。また、HutX存在下におけるHutZのヘム分解反応の活性上昇がみられていることから、HutZだけでなく、HutZ・HutX複合体におけるヘム分解活性制御機構を紫外可視吸収分光法により明らかにする。さらにこれまで進めてきたHutZやHutXのヘム結合体の全体構造を解明するため、引き続きX線結晶構造解析を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)