2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J04115
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉江 あい 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DCI)
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Keywords | 「物乞い」 / イスラーム / ヒンドゥー / カースト / 楽師 / NGO / フィールドワーク / バングラデシュ農村 |
Research Abstract |
本年度は, 昨年度までの研究成果を発表することに力を入れ, 国際学会を含む口頭発表を4つ行った. それぞれの内容は, (1)フィールドへの還元と研究者としての立場性の問題について, (2)「物乞い」の理論的考察とバングラデシュ農村の「物乞い」事例について, (3)バングラデシュ農村における小規模金融の実態について, (4)バングラデシュ農村のムスリム楽師集落についてである。また, 昨年度の5月に歴史地理学会大会で発表したもの(タイトル : 「バングラデシュ村落社会の変容―ヒンドゥーのマイノリティ化に着目して」)を, 学会誌『人文地理』に論説として投稿した. 本年度中に2回, バングラデシュに渡航し, フィールドワークや文献・資料調査を行った. 1回目の渡航では, 上記の論文執筆のための補足調査を中心に行い, GPSによる地図作成と住民へのインタビューを実施した. 文献・資料調査としては, タンガイル県庁レコードルームで, 通常一般には公開されない対象地域の地籍図, 地籍台帳(1918年作成)を収集した. これによって, 1918年当時の対象地域4村の土地保有, 家屋配置状況などを復元することができ, 上記論文の内容をより充実させることができた。2回目の渡航では, 来年度における長期フィールドワークに向けた予備調査を中心に行った. 昨年度に全戸調査を行った村の「物乞い」についてだけでなく, NGOなどから収集した「物乞い」の情報をもとに, 彼あるいは彼女らの住居を訪問し, 生活状況やNGOなどによる支援プログラムへの参加・評価などについてインタビューを行った. さらに, どこでどのように施しを集めているのかを詳細に調べるため, 彼あるいは彼女らが「物乞い」する際にいっしょに歩いて回る調査を試みた. 文献・資料調査では, 国立図書館, バングラデシュ統計局, バングラデシュ宗教省イスラーム法人, ミルジャプール郡警察署およびバナイルユニオン役場などから各種資料・統計データ等を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論研究については, 文献調査を順調にすすめている。実証研究においては対象地域においてフィールドワークを行っているが, 解決すべき課題がある。研究の目的を達成するには, 「物乞い」をして暮らす住民の日常生活や社会関係を明らかにする必要があるが, 彼ら・彼女らの日常生活に立ち入る調査には, 住民と信頼関係をより強く築く必要がある。また, 住民が「物乞い」して回るときの追跡調査においても, 安全を確保しながら慎重にすすめなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究については, 今後も文献調査をすすめ, 展望論文としてまとめる準備を行っていく。実証研究については, これまでの成果を論文として投稿するための文献・データ整理の作業をすすめていく。フィールドワークでは, 住民といっしょに過す時間をいっそう増やして住民との信頼関係を構築すること, また, 追跡調査では試行錯誤を重ねることによって, 安全かつ効果的に行える方法を模索する必要がある。26年度からは長期フィールドワークを開始する予定であったが, 事前に3~4ヶ月ほどの調査を行うことを計画している。調査後, その成果や課題をゼミや学会等で発表して議論を行い, 綿密な計画を立てた上で長期フィールドワークに臨む。
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Research Products
(4 results)