2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J04117
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 恭平 名吉屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ホウ素 / 縮合多環式π電子系 / ルイス酸性 / 光物性 |
Research Abstract |
含ホウ素縮合多環式分子のもつ電子受容性ルイス酸性といった特性をより引き出すことのできる分子設計の開発を目指し、合成に取り組んだ。その中で、新たに、縮環トリナフチルボラン誘導体の合成に成功した。得られた分子は部分的にしか縮環していないにも関わらず空気や水に対して高い安定性を示したことから、安定な含ホウ素縮合多環式分子の設計に新たな指針を与える結果となった。さらに、求電子的臭素化反応と続く鈴木・宮浦クロスカップリング反応の条件においても、充分に安定であり、容易な官能基化が可能であることも見出した。これにより、構造修飾による新たな機能の付与が期待される 得られた分子の特徴として、そのルイス酸性が、これまでに合成された完全に縮環したトリアリールボラシ誘導体に比べてはるかに大きいことを見出した。電気的に中性のルイス塩基であるピリジンとも錯形成を起こし、その会合定数はトルエン溶液中室温で5.1×10^3M-^1であった。サイクリックボルタンメトリー測定及び理論計算の結果から、以前合成した完全に縮環したトリアリールボランと比較して、電子受容性には大きな差がみられなかったことから、ルイス酸性の違いは、ホウ素周りの縮環構造の違いが大きく影響を与えており、部分的な縮環により比較的柔軟な骨格をもつことでルイス酸性が大きくなっていることを明らかにした。 さらに、ピリジン錯体の光物性の詳細を検討したところ、ピリジン錯体が光励起によりピリジンの解離をおこし、二重発光性を示すことを見出した。これまで四配位ホウ素錯体においてこのような光解離の挙動は報告されておらず、新たな光応答性材料の開発に繋がるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな含ホウ素縮合多環式分子の合成に成功し、その構造・物性相関に関する新たな知見を得ることができた。また、単に物性の比較を行うだけでなく、これまでの有機ホウ素化合物には見られなかった新たな光応答性を開拓することができ、研究目的である新たな材料物性の探索と機能の発現に向け、大きく前進したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られた、ルイス酸塩基錯体の光解離と鈴木・宮浦クロスカップリング反応による容易な官能基化が可能な分子骨格を用いて、新たな分子群を探索する。まず、ピリジン等のルイス塩基としてはたらく置換基をホウ素骨格に導入し、自己集積化させ、新たな光応答性超分子システムの構築を狙う。
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Research Products
(3 results)