2013 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物における温度依存型性決定初期因子、及び下流シグナルネットワークの解明
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13J04135
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
谷津 遼平 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 温度依存型性決定 / アメリカアリゲーター / 環境依存型性決定 / 性決定 / TSD |
Research Abstract |
多くの脊椎動物の性決定機構は遺伝型もしくは環境依存型に分類される。大多数の高等脊椎動物は、性染色体など遺伝的要因によって性が決まる遺伝型性決定を行うが、温度や個体密度等の外部環境により性が決定する環境依存型性決定を行う動物も見られる。特にワニや一部のカメ、トカゲなどの爬虫類は性染色体を持たず、発生時期の艀化温度により性が決まる「温度依存型性決定(TSD)」を示す。また、メダカなどの一部の魚類や両生類などは性染色体を保持しているにも関わらず、極端な艀化温度条件によって性分化に偏りが生じ、性転換することが報告されている。しかしながら、温度依存型性決定における根本的な分子機構、すなわち環境温度を受容し生体内のシグナルへ変換するメカニズムや、その下流の性決定シグナルカスケードへの誘導機構は未だ解明されてない。特に温度依存型性決定における温度受容初期誘因メカニズムの同定はこの研究分野の最大の課題と言える。本研究はアメリカアリゲーター・アカミミガメ・メダカの三種の実験動物を用いて温度依存型性決定のメカニズムの包括的な解明を目指しており、温度受容機構で知られているTRPイオンチャネルと温度依存型性決定の関係性に注目している。 ワニの研究は、米国サウスカロライナ医科大学との共同研究で行っており、発生時期にTRPイオンチャネルをターゲットとした薬剤実験を行った。各発生ステージでワニの生殖腺サンプルを採取し、性分化の関連遺伝子、TRP等の発現定量解析や組織解析を行い、TRP機能阻害と性分化への影響を調べた。結果、特定のTRPチャネルを阻害する事により正常な性分化シグナルカスケードの誘導に支障が起きる事が判明し、近々に論文投稿予定である。また、RNA-seq解析も現在行っており、包括的な性決定のシグナルネットワークの解明に挑んでいる。ワニを用いた実験から得られた結果を基に、同様の実験と解析をメダカとアカミミガメで進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカアリゲーターを用いた実験においては予想以上に成果が得られたため、温度依存型性決定における更なる分子機構のメカニズムが解明された。しかしながらスケジューリングや長期出張などの要因によりその他の動物を用いた実験に少々遅れが生じたので来年度中にワニと同様な成果を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、昨年度のワニを用いた実験から得られた結果を基に、同様の実験と解析をメダカとアカミミガメで進める。基本、メダカはTALEN法を用いたゲノム編集により遺伝子操作を予定しており、準備をしている。アカミミガメにおいては同じTRPチャネルをターゲットにした暴露実験を行い、さらにワニとの比較解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Gonadal differentiation in reptiles exhibiting environmental sex determination.2014
Author(s)
Kohno, S., Parrott, B. B., Yatsu, R., Miyagawa, S., Moore, B. C., I guchi, T., and Guillette Jr, L. J.
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Journal Title
Sexual Development
Volume: Vol.0
DOI
Peer Reviewed
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