2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド中の単一NV中心による量子系の初期化と量子標準限界を超えた測定の実証
Project/Area Number |
13J04142
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下岡 孝明 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子情報 / 磁気測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では単一格子欠陥(nitrogen-vacancy(NV) 中心)中の電子スピンと核スピンを用いた微小磁場測定を目指している。このような量子系を用いた測定において量子系の初期化、周囲からのノイズを抑えた測定は共に重要な意味を持つ。前年度の研究ではこれらの課題に実験、理論の両面から取り組んだ。以下にその報告をする。
(1) 量子系の初期化に向けた実験は不完全な量子系の初期化は量子制御や検出操作の際にエラーが生じる要因となる。そのため量子系の初期化は本研究において重要な位置づけにある。NV中心の電子スピンは光励起により容易に初期化できるのに対し、核スピンの初期化には電子スピンを介したスピン状態の初期化が必要である。先行研究では電子スピンを初期化する際に起こる核スピンへのノイズの影響を抑えるため高磁場下で電子スピンとの結合が弱い核スピンを用いた実験が必要と報告されている。前年度は新たに高磁場での実験装置の立ち上げを行った。今年度は研究室内で電子スピンとの結合が弱い核スピンを用いて量子系での初期化の実証を試みる。
(2) 周囲からのノイズを抑えた微小磁気測定の理論提案理論研究としては微小磁場の高感度測定手法の提案を行っている。ノイズを抑えた測定手法の確立は微小磁場の信号が周囲からのノイズの信号強度以下の場合非常に重要な意味を持つ。我々の新たに提案する手法では量子力学特有のゆらぎの効果を利用することで、環境の微小な変化からくるノイズが測定感度の上限を決めている場合に、その上限を超えた測定が可能となる。また、上記の理論提案の成果は論文投稿へ向け現在執筆を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の実現に向けた進展として、量子系初期化の実験は現状では十分な成果はないが先行研究との比較から対策は練られているため実現に向け大きな課題はないと考えられる。また理論面での研究においては、外部の研究者との活発な議論を通し研究課題の実現に向けた新しい実験手法を提案した。今回新たに提案した手法は電子スピンを用いた磁気測定では前例がなく十分な成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は量子系の実験と初期化と微小磁気測定に関する理論の執筆を目指す。実験的検証では前年度に立ち上げた高磁場での実験装置を用いて量子系での初期化の実証を試みる。ノイズ磁場下での磁気測定の理論提案に関しては現在投稿へ向けた準備を行っている。
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Research Products
(1 results)