2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎不全モデルマウスにおける肝CYP3A11発現変容機構の解明
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13J04175
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濵村 賢吾 九州大学, 薬学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 慢性腎不全 / CYP3A11 / 時計遺伝子 / DBP |
Research Abstract |
現在、我が国における慢性腎不全患者は増加の一途をたどり、薬物による対症療法が行われている。しかしながら、肝臓で薬物代謝を担う酵素であるシトクロムP450 (CYPs)の発現量が腎不全時に減少することで、副作用が生じやすくなる。しかし、基本転写因子のみに着目した従来の研究では、具体的な原因因子が抽出されておらず、メカニズムを解明しようという試みが止まっている。 現在までに申請者は、肝臓において薬物代謝を担う酵素量が、慢性腎不全に伴い減少する機序に、これまで報告されている基本転写因子ではなく、時計遺伝子で転写促進因子であるD-site binding protein (DBP)が関与していることを明らかとした。今年度は、腎不全時の肝臓における時計遺伝子の変容機構を他臓器に応用すべく、腎不全によって併発する代表的な二次症状『心血管疾患』に焦点をあてることとした。しかしながら、腎不全時の肝臓において観測されたDBPの発現低下が、心臓においては起こらないことが明らかとなった。そこで、肝臓DBP発現量の低下機構の詳細を明らかにすることで、臓器間における挙動の違いの解明を試みることとした。 サイトカインアレイ法を用いて血清中濃度を網羅的に測定したところ、Transforming Growth Factorβ(TGF-β)の濃度が有意に上昇していることを見出した。そこで、腎不全モデルマウスに抗TGF-β抗体を投与し、TGF-β活性を阻害すると、肝臓DBP、及びDBPが制御している遺伝子である肝臓CYP3A11の発現低下が起こらないことが明らかとなった。 現在までに、腎不全モデルマウスの肝臓において充進していたTGF-βシグナル活性が、心臓においては軽微であり変化が見られないことを明らかとしている。以上から、臓器間によるTGF-βのシグナル伝達活性の違いが、DBPの発現量に影響を及ぼしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では、腎不全時の肝臓における遺伝子発現量の変化が、そのまま他臓器においても応用できるものだと考えていたが、実際に測定してみると臓器間で異なる挙動を示すことが明らかとなり、実験計画の修正が必要となった。しかしながら、肝臓DBP発現量の低下機構の詳細を明らかにする過程において、臓器間における挙動の違いの解明もおこなうことができたため、現状ではおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢、老化に伴う体内時計の機能低下は糖尿病、がん、循環器障害などの様々な成人性疾患の原因になることが指摘されている。しかしながら、疾患に伴い二次的に発症する症状、及び原疾患の悪化が、体内時計機構の変化により生じているという考えはない。そこで、慢性腎不全モデルマウスにおける肝臓CYP3A11や時計遺伝子DBPの発現が変化することが、生体内に及ぼす影響の検討を行う。臓器間でDBPの発現変化挙動が異なるため、肝臓DBPにのみ着目し、その下流遺伝子であるCYP3A11の発現が低下することで代謝不全となる内因性の因子を探索することを行う。その後、内因性の因子の異常な蓄積が腎不全時の生体内に与える影響を検討していく。
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Research Products
(3 results)