2013 Fiscal Year Annual Research Report
心筋再生を担うクロマチンーヒストン複合体の新規分子メカニズム
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13J04208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 遼 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | SWI/SNF-BAF複合体 / クロマチンリモデリング / 心臓再生 |
Research Abstract |
魚類や有尾両生類は有用な再生モデル動物として知られており、その心臓は成体においても高い再生能力をもつ。近年、哺乳類の心臓も生後1週間以内の新生児ならば再生可能であることが報告された(Porrello ER et al., Science. 2011)。しかし成体においては再生することができず、このことが心筋梗塞後の心機能回復の大きな妨げになると考えられている。 昨年は、哺乳類において心臓再生能が低下する原因の解明を目的とし研究を遂行してきた。近年、数種のクロマチン因子群が心筋誘導時に直接的に関与することが報告され(Takeuchi et al., Nature 2009 ; Nature Commun 2011)、私は心臓形成・心臓再生におけるエピジェネティックな制御機構に着目してきた。その結果、クロマチンリモデリング因子Baf60c依存的なクロマチン構造変換が、心臓再生に必須であることが明らかになった。Baf60cは魚類から哺乳類に至るまで高く保存され、その発現量は心臓再生能力の低下のタイミングと非常によく酷似していた。このことより、哺乳類成体における心機能障害、とくに心臓再生能力の低下とエピジェネティック制御の強い関連性が示唆される。今までの結果に基づいた論文を現在、執筆中である。 昨年1年間で行った主な研究内容は以下の3点である。 1. 有尾両生類vsマウス心臓再生可能時vs不可能時の遺伝子発現プロファイルの作製 2. 心臓再生時特異的なクロマチン改変領域の同定 3. 哺乳類心筋増殖活性研究
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、生体組織からのChlP解析の系の立ち上げに特に力を入れて取り組み、心臓発生過程・心臓再生過程におけるChlP条件を見出すことができた。生体組織からのChlP解析の系を確立できたことは、今後全ゲノを標的としたCh1P-seq解析へ発展させる上で非常に意味がある。また、現在、昨年度から取り組んできた研究を論文投稿のためにまとめている最中である。以上の2点より、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はChlP-seq解析系・LS-MS解析系を確立し、心臓再生における網羅的な標的領域や機能複合体の同定を目指す。この試みにより、心臓再生の分子メカニズムの全容を明らかにしたい、と考えている。 また、先に述べたゲノムワイドな解析系の遂行のためには、相当の細胞数を要するため、このような材料の量的な課題をクリアする対策を考えなければならない。また、心臓自体が多種多様な細胞群によって構成され、さらに、心臓発生そのものも色々な因子の微妙な量的変化で影響を受けてしまう。この点を考慮し、今後は着目する材料に関しても、心筋細胞に的を絞る、単離する細胞集団の再検討を行う、といった対策を考えている。
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Research Products
(3 results)