2014 Fiscal Year Annual Research Report
心筋再生を担うクロマチンーヒストン複合体の新規分子メカニズム
Project/Area Number |
13J04208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 遼 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心臓再生 / クロマチン構造変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類や有尾両生類は有用な再生モデル動物として知られており、その心臓は成体においても高い再生能力をもつ。近年、哺乳類の心臓も生後1週間以内の新生児ならば再生可能であることが報告された(Porrello ER et al., Science. 2011)。しかし成体においては再生することができず、このことが心筋梗塞後の心機能回復の大きな妨げになると考えられている。本研究では、脊椎動物の再生メカニズムを分子レベルで明らかにし、哺乳類の心臓再生能力が限定されていく原因を明らにすることを目的とする。 先行研究により数種のクロマチン因子が心筋誘導時に直接的に関与することが示され (Takeuchi et al., Nature 2009; Nature Commun 2011)、私は心臓形成・心臓再生におけるエピジェネティックな制御機構に着目してきた。一昨年までの研究により、クロマチンリモデリング因子の一つBaf60cが心臓発生初期およびマウス新生児の心臓再生時に一過的に高く発現することが示唆された。そこで昨年度は、主に心臓再生時におけるBaf60cの機能に焦点をあてて、解析を続けてきた。現在、このBaf60cの心臓再生時における制御機構が脊椎動物に共通するものかどうかを検証するため、再生能力の高い魚類や両生類を用いて解析を行っている。以下にこの一年間で行った主な研究内容を記す。
1.Baf60cの発生過程における発現パターンの解析 2.新生児マウスの心臓再生時におけるBaf60cの阻害実験 3.マウス心臓再生時に応答するゲノム領域の特定
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はできるだけ昨年度中に論文としてまとめあげることを目標としてきたが、その目標を達成することはできなかった。しかし、一昨年から取り組んできた心臓組織からのクロマチン免疫沈降(ChIP)法の条件検討に今年度も取り組み続けた結果、目的のエピジェネティック因子を機能阻害または過剰発現させると、心臓再生に関わるいくつかの遺伝子制御領域への転写因子の結合やヒストン修飾が変化することを見出した。この結果は去年から示唆してきたものであったが再現性がなかなかとれず苦労を重ねて来た。今年度は安定して結果を得ることができるようになったので、この点は大きな成果だと考える。以上の点を踏まえ、当初の計画以上とは言えないが、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究より、クロマチンリモデリング因子の一つBaf60cがマウス新生児の心臓再生時に重要な役割を果たすことが分かった。私は、このBaf60cの心臓再生時における制御機構が脊椎動物に共通するものであり、Baf60cが脊椎動物における心臓再生能力を規定するkey因子の一つなのではないか、と考えている。そこで、成体においても高い心臓再生能力をもつ魚類や両生類の心臓切除時におけるBaf60cの発現パターンと機能解析を行い、マウス心臓再生時におけるデータとの比較を行う予定である。
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Research Products
(4 results)