2013 Fiscal Year Annual Research Report
黄宗羲の思想とその背景―清初学術をめぐる諸問題と『明儒学案』―
Project/Area Number |
13J04211
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
豊島 ゆう子 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 黄宗羲 / 明儒学案 / 劉宗周 / 明末清初 |
Research Abstract |
本研究は、17世紀中国の学者・思想家である黄宗羲(1610-1695)の思想と、その代表的著作『明儒学案』について、同時代の政治・社会・学術等の具体的状況に即して検討するものである。今年度は、清王朝の支配が確立していった康煕年間(1662-)における黄宗羲の学問活動と学問観について研究をおこなった。研究を進める上で、中国の図書館に所蔵されている清初思想関連文献を調査し、さらに、中国で進められている黄宗羲研究の状況を把握し、その研究成果や研究方法に学ぶ必要があった。そこで、2013年9月より、中国・復旦大学哲学学院にて、宋明理学を専門とする呉震教授の指導の下で調査・研究に従事してきた。まず、復旦大学図書館および上海図書館にて黄宗羲とその周辺人物の著作を調査した。また、既発表論文「黄宗羲の思想――劉宗周思想の受容から「自得」の重視ヘ――」は、康煕年閥における黄宗羲の学問活動と学問観の一端を解明したものであるが、これを中国語に翻訳し、2013年12月14日、中国寧波市で開催された"多維視野下的漸東文化"学術検討会において発表した(「論黄宗羲的思想―従劉宗周思想的接受到"自得"的重視」)。本学会は、黄宗羲がその生涯の多くを過ごした浙東地域の文化について、歴史・思想・文学といった様々な角度から検討をおこなうものであった。本学会に参加したことで、中国で黄宗羲研究をおこなっている研究者と交流し、研究に関して意見交換をすることができたのみならず、黄宗羲の活動した浙東地域について様々な側面から考察することができた。また、これと平行して、同時代に活動した思想家、特に黄宗羲と同じく劉宗周の教えを受けた思想家の分析も進めている。これによって、黄宗羲が師の劉宗周から受容した思想が、同時代の中でどのように位置づけられるのかが明らかになるといえる。今後、2014年7月まで引き続き復旦大学にて研究をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究課題を達成するために、中国・復旦大学にて研究に従事した。哲学学院の呉震教授の指導の下、中国の図書館に所蔵されている資料を調査し、中国の近世思想研究の現状にっいて学んだ。また、既発表論文を中国語に翻訳し、中国・寧波の国際学会で発表した。以上の点から、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2014年7月31日まで引き続き中国・復旦大学にて調査・研究に従事する。特に、『明儒学案』『明文案』の編纂の経緯を調査するために、必要な資料を収集する。また、中国における黄宗羲思想研究の動向を調査する。その上で、黄宗羲の思索と実践の一環として『明儒学案』を捉え、その内容を分析し、その清初における位置づけを再検討する。最終的に、これまでの成果を学会で発表し、論文にまとめる。
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Research Products
(1 results)