2014 Fiscal Year Annual Research Report
知覚的・認知的ずれを補正する視覚的運動処理メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J04215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 健太郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動知覚 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,運動が引き起こす知覚的・認知的変化の生起メカニズムを実験的に検討し,各処理段階の持つ補正の役割を整理することを目的とする。本年度は,主に以下の内容について検討を行った。 ①運動物体の重なりによる速度変容の過程を明らかにした:前年度からの継続で運動物体の重なりによる速度知覚の変容について検討を行った。実験の結果,全体の運動速度が効果の大きさに影響すること,刺激間のコントラスト比は重要でないことが示された。また静止刺激を重ねた実験やランダムドット刺激を用いた実験から,遮蔽が直接的な要因ではないことを明らかにした。さらに,刺激間の相対的な速度を操作した実験から,運動の対比効果が現象に関わる可能性を示唆した。
②速度と時間周波数のどちらが時間知覚に寄与するのかを明らかにした:運動対象が時間知覚に及ぼす影響において,運動速度と時間周波数(時間的変化量)のどちらが主要な要因なのかという問題が長年議論されてきている。本実験では,左右方向に往復運動するランダムドット刺激を用い,この刺激の速度と反復回数を操作することでどちらが知覚時間への影響に重要であるかを検討した。実験の結果,運動速度の上昇に伴い知覚時間は増加したが,反復回数には条件間で有意な差は示されなかった。この結果は,速度の方が時間周波数よりも知覚時間への影響に重要であることを示唆している。
以上の研究内容を含めた成果について6つの国内外の学会,研究会で発表を行った。またこれまでの研究の成果として,査読付き国内誌1件を含む2件の論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,主に前年度からの継続として運動物体の重なりによる速度知覚の錯覚現象に関して実験的に検討を行った。この現象は,二つの反対方向に回転する物体を重ねて呈示した場合に,手前に配置された刺激の運動速度が,奥に配置された刺激に比べて速く知覚されるというもので,本年度の検討によって,どのような要因がこの現象に関わるのかについて深く考察を進めることができた。この成果は現在論文としてまとめているところであり,また並行して行って来た研究の成果も査読付き学会誌や国際学会のProceedingsに掲載されるなど,これまでの成果が結実し始めている。現在も国際誌に論文を投稿中であり,次年度の成果に繋がる準備も出来てきていることから,おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果を,現在投稿中のものを含め,雑誌論文として順次報告を行っていく。また本年度の研究実施には至らなかった,視覚的な動きの処理による認知的な変化の生起メカニズムについて,バイオロジカルモーションなどを用いて検討を行って行く予定である。さらに本年度検討を行ってきた速度と時間周波数が時間知覚に及ぼす影響についてや,視聴覚間の類似性が遅延時間の知覚に及ぼす影響について,より詳細に検討を行っていく。またこれまでの成果をまとめ,各運動情報処理段階の持つ補正の役割を整理し,統一的なモデルの構築を目指す。
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Research Products
(9 results)