2013 Fiscal Year Annual Research Report
脂質・タンパク質ラジカルの選択的検出・同定手法の開発
Project/Area Number |
13J04222
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松岡 悠太 九州大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フリーラジカル / ニトロキシド / 脂質 / タンパク質 / 光電子移動 / 光化学 |
Research Abstract |
脂質・タンパク質ラジカルの選択的検出・同定手法の開発のため、本年度は、蛍光原子団とニトロキシドとの相互作用の解析を行った。まず蛍光原子団であるNile-Blue, Silicon Phthalocyanineにニトロキシドを結合させた新規蛍光ニトロキシド(Nile-Blue-TEMPO, SiPc-TEMPO)を合成し、その光物性を測定した。ニトロキシドの付加によって蛍光原子団の吸収・蛍光波長に変化は見られないのに対し、その蛍光量子収率は大幅に低下した。さらに、ニトロキシドによる蛍光原子団の消光過程における光誘起電子移動の関与を検討するため、化合物の酸化還元電位を測定した。その結果、蛍光原子団のHOMO, LUMOに由来する電位間にニトロキシドのSOMOに由来する電位が得られ、光照射後の励起状態においてニトロキシドから蛍光原子団への光誘起電子移動が生じ得ることが示唆された。その一方、ニトロキシド部位の常磁性が失われた化合物においてはニトロキシド部位の酸化電位が大きくPositive shiftし、この場合においては光照射後の励起状態において電子移動が生じ得ないことも同様に示している。さらに時間分解分光法を用い、消光過程における中間体の検出を行ったところ、いずれの蛍光ニトロキシドにおいても自身の蛍光原子団部位に由来する一重項励起状態の寿命がニトロキシドを結合させていない化合物に比べて極めて短くなることが分かった。またNile-Blue・TEMPOにおいて、その中間体として電子移動によって生じる電荷分離状態に由来する吸収スペクトルは観測されなかった。これは電子移動後に生じる逆電子移動が電子移動よりも速く生じるためであると考えられた。その一方、SiPc-TEMPOにおいては蛍光原子団部位の三重項励起状態に由来する吸収スペクトルが観測された。これは電荷分離状態から逆電子移動により三重項励起状態が生じたためと考えられた。以上の結果より、ニトロキシドによる蛍光原子団の消光機構が光誘起電子移動によるものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、種々の蛍光原子団とニトロキシドを結合させた蛍光ニトロキシドを合成し、その酸化還元電位、過渡吸収の測定結果よりニトロキシドによる蛍光抑制メカニズムが光誘起電子移動であることを示した。本知見は蛍光ニトロキシドプローブの論理的設計において極めて有用であり、当初の研究目的を十分に達成していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、消光機構として本年度に示した光誘起電子移動に着目し、適切な蛍光原子団をニトロキシドに結合させることにより蛍光ニトロキシドの論理的なプローブ設計を行う。さらに合成したプローブを用い、試験管・細胞レベルでの脂質・タンパク質ラジカルの検出・同定に着手する。
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Research Products
(2 results)