2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ストレスによる前頭前皮質の機能変化の分子基盤とその役割
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13J04246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 亮太 京都大学, 医学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD
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Keywords | ストレス / ドパミン受容体 / 情動行動 / うつ病 |
Research Abstract |
過度のストレスやストレスの遷延化は、抑うつや不安元進といった情動変容や作業記憶や行動の柔軟性の低下といった認知機能障害を引き起こし、気分障害や統合失調症などの精神疾患のリスク因子ともなる。基礎研究および臨床研究の両面から、情動変容や認知機能障害における内側前頭前皮質(mPFC)の機能変容の意義が示唆されている。したがって、情動制御の破綻や認知機能障害に関連するmPFCの機能変容を解析することは、精神疾患の新たな治療法の開発につながるものと考えられる。本研究では、小動物うつ病モデルとされている反復社会挫折ストレスによるmPFCの機能変化とその分子基盤を解析している。 過去の研究から、社会挫折ストレスはmPFCに選択的なドパミン応答を引き起こし、このドパミン応答は社会挫折ストレスの反復により減弱することが示された。しかし、社会挫折ストレスにより惹起されるドパミン応答がmPFCでどのような作用を引き起こすかは明らかでない。そこで、社会挫折ストレスによる社会的忌避行動の誘導における内側前頭前皮質のドパミン受容体の役割を検討した。この目的のために、ドパミンD1受容体を標的としたmicroRNAを発現する組み換えアデノ随伴ウイルスを内側前頭前皮質に局所注入する実験を行い、同領域のドパミンD1受容体が社会挫折ストレスによる社会的忌避行動の誘導を抑制していることを示した。この解析をさらに進め、ドパミンD1受容体が作用する神経細胞種やD1受容体により制御されるストレス抵抗性に関わる分子の同定に迫る知見も得られつつある。現在、ドパミンD1受容体が作用する神経細胞種をさらに詳しく検討すると共に、ドパミンD1受容体を介したmPFC機能変容がストレズによる認知機能障害にも関与するかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は慢性ストレスによる前頭前皮質の機能変化の分子基盤と役割を明らかにすることである。昨年度は内側前頭前皮質内のドパミン系の役割に着目し、同領域のドパミンD1受容体が社会挫折ストレスによる社会的忌避行動の誘導を抑制していることを見出した。しかし、社会的忌避行動の誘導に関わる内側前頭前皮質の神経細胞種の同定には至っておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
社会挫折ストレスによる社会的忌避行動の誘導に関わる内側前頭前皮質の神経細胞種を光遺伝学的手法や神経回路特異的な内側前頭前皮質のドパミンD1受容体の発現抑制により検討する。上記の実験により同定された内側前頭前皮質の神経細胞種をFACSソートやlaser capture microdissectionにより単離し、遺伝子発現変化の網羅的解析を行うことで社会挫折ストレスによる社会的忌避行動に関連の深い分子群を絞り込む。
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Research Products
(3 results)