2013 Fiscal Year Annual Research Report
近世大名家の人生儀礼と藩主家族構成員の研究―秋田藩佐竹家を事例に―
Project/Area Number |
13J04287
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 翔太郎 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 藩主家族構成員 / 正室と側室 / ジェンダー構造 / 両崇 / 両敬 / 看抱 / 幼少相続 / 親類大名 |
Research Abstract |
本研究は、近世中期から明治初頭までの大名家の儀礼、藩主家族構成員の役割、大名家の交際を通時的に分析し、政治権力世襲の体制を支えた仕組みやジェンダー構造の解明を目的とするが、当該年度は近世中期、特に18世紀の事例について研究発表を行った。 藩主家族構成員については、大名の正室や側室が政治権力世襲の体制の維持に果たした役割の解明は手薄になっていた。この点について、正室が妾に子を産ませるために主体的に行動したこと、妾から昇進して側室として遇された藩主の実母が発言権を有していたこと等、これまで研究蓄積のなかった点を明らかにした。また大名家内の意思決定過程における女性の位置に注目し、近世中期の大名家内のジェンダー構造をより明確にすることができた。これについては学術雑誌『歴史』第122輯に掲載することが決まっている。 近世大名家の交際、特に親類・姻戚大名との関係については、17・19世紀の事例について研究蓄積がある一方で、18世紀の動向については手薄になっていた。この点について、家格差のある大名家と対等な関係で交際する「両崇」・「両敬」の慣行や藩主の幼少相続に際して結ばれた、親類・姻戚大名による「看抱」という補佐の実態に注目して論じた。18世紀前半の享保期頃を画期として大名家同士が「両崇」関係を結ぶようになり、以後交際範囲を拡大させていったことなどを明らかにし、東北史学会と近世史フォーラムで口頭報告した。近世中期の動向を明らかにしたことは、近世前・後期の大名家の交際の研究とリンクさせ、近世全体の動向を理解する上で意義があるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
藩主家族構成員の役割や、親類・姻戚大名家との交際については、19世紀の動向を論文もしくは口頭報告しまとめることができ、順調に進んでいる一方で、藩主家の儀礼について、論考をまとめられてはいるものの、論文として発表できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、19世紀の事例について、明治初頭までを念頭に研究を進める予定である。当該年度には、19世紀の藩主の人生儀礼、幕末から明治初頭までの奥向関係史料である「御日記」、「御家門様御取扱」など親類・姻戚大名との交際に関する史料を収集しており、今後未収集分を収集するとともに、これらを分析し研究発表を行うつもりである。これまでの先行研究では、明治維新を経て大名家が公権力を失うなかで、儀礼の機能や藩主家族構成員の役割、親類・姻戚大名との関係が如何に変容したか等については未解明であり、この点を当該年度の成果もふまえて、18世紀から通時的に明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)