2013 Fiscal Year Annual Research Report
二官能性機構を指向した固体触媒による高選択的な水和反応の開発
Project/Area Number |
13J04305
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 亜季 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 水和 / アミド / ニトリル / 固体触媒 / キチン / ルテニウム / 多糖 |
Research Abstract |
水和反応は水を原料に有機化合物を合成する基本的な有機合成反応の一つであり, オレフィンやニトリルに対する水和反応によるアルコールやアミドの合成など工業的な重要性も高い. 本研究の目的は, 反応の遷移状態に着眼して固体触媒の表面をデザインすることで高選択的で高効率な水和反応を実現することである. 今年度は二官能性を利用して協奏的な遷移状態を目指す触媒設計指針を基に担持金属触媒を設計・調製し, ニトリルの水和反応における触媒活性を調べた. その結果キチン担持ルテニウム触媒が水中で多様なニトリルの水和反応を促進することを見いだし, その成果を国内および国際学会にて報告した. 現在, これらの成果について論文執筆中である. 実施内容の詳細を以下に記す. 担持金属触媒は, 有機担体である多糖や無機担体である金属酸化物に金属源であるルテニウムやロジウム, 白金, 銅マンガンなどの塩化物や酸化物を含浸法により担持することで調製した. また調製した担持金属触媒のニトリルの水和反応における触媒活性は, ベンゾニトリルまたはアクリロニトリルをモデル基質として調査した. その結果, 多糖担持ルテニウム触媒が水中でニトリルからアミドへの水和反応を促進させることを明らかにした. 特に市販のキチンを担体としたルテニウム触媒Ru/chitinはセルロースやキトサンを担体として用いたものよりも高い活性を示した. さらに本反応を多様なニトリルの水和反応に適用したところ, メチルエステルや, α, β-不飽和炭素-炭素二重結合を保持したまま望みの生成物を与えた. Ru/chitinのルテニウム含有量はICP発行分光分析により確認した, また共同研究者によるRu/chitinのTEMの測定によりキチンの表面にルテニウムのナノパーティクルが存在すること, EXAFS解析によりルテニウム酸化物が存在することを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画として固体触媒の合成および水を原料とした共役アミドとアルデヒドの合成法の開発を提示していた, 今年度は, 様々な担体と金属を組み合わせた担持金属触媒を調製し, その触媒活性を調査した. アルキンからアルデヒドの水和反応は促進する触媒は見っかっていないが, キチン担持金属触媒が水中でニトリルからアミドへの水和反応を促進することを見いだし, 本反応が共役アミドの合成においても高い収率で目的物を与えることを明らかにした. さらにRu/chitinの物性についても, 金属の形状や粒子径, 構造をTEMおよびEXAFSを用いて明らかにしている, 以上の点から, ほぼ計画通りに課題を達成しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
・今年度に得られた知見を基にRu/chitinを用いたニトリルの水和反応において基質適用範囲の拡張を目指す. ・本研究の課題として掲げていたニトリルの水和反応における反応温度の低下を目指す。 これまでに, ルテニウムの担持量や水の添加量を変化させることにより, 反応温度を低下させても良好な収率で目的生成物が得られることを確認している. 今年度は反応条件を最適化することにより, より低い温度で反応が進行する系の実現を目指す. ・Ru/chitinを用いてグラムスケールでのアミドの合成を目指す. これまでに本反応においてα位に酸素原子を有するニトリルが高い反応性を示すことを見いだしている. 今年度はRu/chitinをメトキシアセトニトリルの水和反応に適用し, グラムスケールでのアミドの合成を目指す.
|
Research Products
(6 results)